もしそれが本当の理由なら……もうおしまいだ。
席牧白の手に渡ったものは、もう取り返せないだろう。
問題は、席牧白がそれを何に使うのか、そのものは部外者には何の価値もないのに。
葉深は不安で、すぐに夏夢を探しに出かけた。
……
夏星河は彼が来ることを予想していた。ボディーガードからの報告を聞くと、冷ややかに言った。「通してあげなさい。」
「はい。」ボディーガードは立ち去り、すぐに葉深を案内して入ってきた。
葉深は、夏夢が今回も会ってくれないと思っていたが、まさかこんなにあっさり同意するとは。
リビングに入ると、一週間ぶりに見る夏夢の顔色が一段とよくなっているのを見て、思わず目を疑った。
なぜか分からないが、今の夏夢は以前より見栄えがよくなったような気がした。
彼女には、以前の夏夢には及びもつかない、落ち着いた威厳が漂っていた。
なぜだか分からないが、葉深は今、彼女を見直していた。
葉深は夏夢の変化を、すべて彼女の身分が変わったせいだと考えた。
人は身分が変われば、当然、雰囲気も大きく変わるものだ。
「夏夢、聞きたいことがある。」葉深は開口一番、率直に言った。今すぐ知る必要があった。彼女がそのものを席牧白に渡したかどうかを。
「みんな下がってくれ。お前と二人で話がしたい!」
夏星河は少し笑って、「私があなたと二人きりで話すと思う?」
「本気だ。」葉深は眉をひそめた。「安心しろ、お前に何かするつもりはない。」
「5分だけよ。話すことがあるなら早く話して。さもないと追い出すわ。」夏星河は容赦なく宣言した。まさに彼を眼中にも置いていない様子だった。
葉深は陰鬱に歯ぎしりした。
夏夢は以前、彼にいじめられるばかりだったのに、今は後ろ盾ができたからって、自分が偉くなったと思っているのか?
この売女め、あのものを手に入れたら、どうやって懲らしめてやるか見ていろ!
「いいだろう、では直接聞く。お前と席牧白は一体どういう関係なんだ?はっきりさせないと、離婚なんて考えられないぞ!」葉深は冷笑しながら脅した。
彼は夏夢が離婚を切望していることを知っていた。
離婚で脅すのが一番効果的だった。
案の定、夏星河は一瞬黙り込んでから、淡々と答えた。「私と彼には何の関係もありません。」