夏星河が目覚めさえすれば、相手が誰なのか分かるはずだ。
その話を聞いて、陸祈は興奮して急いで言った。「昨夜ついに研究が breakthrough したんです!実験はもうすぐ成功しますよ!」
席牧白は素早く顔を上げ、とても信じられない様子で「何だって?」
陸祈は嬉しそうに「研究がもうすぐ成功するって言ったんです」
席牧白は一瞬固まり、心の中に喜びが急に湧き上がってきた。
彼は昏睡状態の夏星河を見つめ、目には抑えきれない興奮の色が浮かんでいた。
もうすぐ、彼の夏星河が戻ってくる……
……
陸祈の研究breakthrough のニュースは、席牧白にとって、この上ない朗報だった。
席牧白は直ちに夏星河を移動させ、さらに陸祈の研究を全面的に支援した。
陸祈によると、メモリーセルが十分な量に達したら、夏星河と夏夢の脳に移植できるという。
メモリーセルが彼女たちの記憶を複製し終えれば、それぞれ元の場所に戻れるはずだ。
ただし、夏夢の身体は損傷が激しすぎたため、夏夢の同意を得て、席牧白は彼女のために新しい身体を見つけた。
新しい身体の持ち主は孤児で、しかも事故で何年も植物状態だった。
陸祈の診断によると、その女の子は一生目覚める見込みがないとのことだった。
だからこそ彼女の身体を使うのが最適だった。結局のところ、彼女が目覚めなければ、身体機能は衰退し、いずれ植物状態のまま死亡するだろう。
夏夢が彼女の身体を使うことは、双方にとって良いことだった。
しかも、その女の子はまだ若かったので、夏夢が彼女になれば、すべてをやり直すことができる。
新しい人生の始まりに、夏夢は期待を膨らませていた。
また、席牧白たちへの感謝の気持ちと、以前の自分の行動への後悔の念も強くなっていた。
夏星河が目覚める前に、夏夢は自発的にブラックボックスを引き渡した。
席牧白は夏星河に代わってブラックボックスを受け取った。
このものがあったからこそ、葉深は殺され、夏星河はこんなに苦しめられたのだ。
席牧白が夏夢を助けたのは、善意からではなかった。
彼にはよく分かっていた。もし夏星河が夏夢のこの人生を経験していなければ、潜在的な危険に気付くことはできなかっただろう。
いずれ彼女も事件に巻き込まれ、その時には取り返しがつかなくなっていただろう。