夏星河は優しすぎる聖母のような人間ではなく、敵に対して決して容赦はしない。
席牧白も同様だ。
そして今回、彼らの敵は同じ相手だった。
当然、その者に良い結末は待っていない。
今は席牧白が情報を持ち帰るのを待つだけで、封少煌を一気に潰すことができる。
だから封少煌の良い日々は、長くは続かないだろう。
同様に、封少煌も席家の良い日々は長くは続かないと考えていた。
林家が介入し、彼に一つのチャンスを与えてくれたからだ。本来なら席牧楠を飛龍部隊の指揮官に任命する辞令が、突然変更されたのだ!
席牧楠と封少煌の同時任命に変更されたのである。
彼らはそれぞれ自分の部隊を訓練し、6ヶ月後に演習に参加する。より優秀な部隊を率いた方が唯一の指揮官となり、もう一方は副官となる。
つまり、本来席牧楠が手に入れるはずだったものが、突然、茹で上がったアヒルが飛び立とうとしているような状況になったのだ。
もし掴めなければ、アヒルは彼のものにはならない。
掴めれば彼のものになる。
しかし相手も侮れない存在で、勝利するためには全力を尽くさなければならない。
この命令を受けた時、席家の者たちは真相究明に即座に動き出した。
調査すると、案の定林家が関係していた。
林家が動いて手を回し、封少煌にこのチャンスを与えたのだ。
「どうやら林家は我々と敵対するつもりのようだな」席おじいさんは顔を曇らせ、不機嫌そうに言った。
席江年の表情も暗く沈んでいた。「父上、彼らは敵対するつもりというより、それは確実です。彼らは明らかに我々を標的にしています」
「林芸を怒らせただけで?」席牧楠は嘲笑した。
今や、彼は林家のような名門一族を軽蔑していた。
彼らの行動は度量が狭く、卑劣ですらあった。
席おじいさんは首を振った。「事はそう単純ではないだろう。林家は必ず我が席家に何か企みがあるはずだ。お前たちも気をつけろ。今回の敵は一つではないぞ」
「おじいさま、ご安心ください。私は絶対に封少煌に全てを奪われたりはしません!」
席おじいさんは頷いた。「その通りだ。今すぐにでも封少煌を押さえ込む方法を考えろ。とにかく彼にお前の地位を奪われてはならん。今回のチャンスも逃してはならない。覚えておけ、一度チャンスを逃せば、挽回は難しくなる」
「はい!」席牧楠は厳かに約束した。