しかし、彼らは誰一人そうしなかった。全員が彼女の味方に立った。
彼らは巻き込まれることも、彼女の罪が晴れないことも恐れなかった。
もし彼女の嫌疑が晴れなければ、これだけ多くの人々の将来に大きな影響が及ぶはずなのに。
そして彼らは一人一人、本来なら無限の可能性を持っていたはずだった。
このような巨大な誘惑の前で、彼らは全員が諦めることを選んだ。それは夏星河の心を深く動かした。
当然助けるべき席家がそうしたとしても、彼女は同じように感動していた。
なぜなら、席家が断固として彼女を助けることを選んだことで、より大きな犠牲を払うことになるから。
彼らは疑いをかけられるだけでなく、多くのものを失うことになる。
例えば席牧楠が競っている飛龍部隊の総指揮官のポストなど……
このポストは席家にとって極めて重要で、一度このポストを手に入れれば、栄光を数十年も延長できるほどのものだった。
一族を簡単に数十年も栄光に導けるチャンスなら、バカでも必死に掴もうとするはずだ。
まして席家のような、血みどろの戦いの中を一歩一歩這い上がってきた者たちなら、なおさら何としてでも掴もうとするはずだ。
彼らは栄光が簡単には得られないことを知っており、一つ一つのチャンスの重要性を理解している。
夏星河は信じていた。どれほどの犠牲を払っても、おそらく彼らはこのチャンスを掴もうとするだろうと。
しかし今、彼らは彼女を救うために、それを諦めた。
彼女を助けることは、彼ら自身を助けることにもなるのだが。
しかし彼女を見捨て、全てを彼女の責任にしてしまえば、もっと簡単だったはずだ。
彼らは簡単な道を選ばず、いつ破滅的な災いが降りかかるかもしれない道を選んだ。
これは彼らの義理人情だけでなく、彼女への重視の表れでもあった。
だから保釈が決まった瞬間、夏星河は決意した。今後席家が困ったときは、自分も何を犠牲にしても助けると!
……
保釈が決まったとはいえ、夏星河はもう一度取り調べを受けてから釈放されることになった。
席牧楠も同様にもう一度取り調べを受けた。
取り調べが終わり、二人が警察署から出てきたとき、席牧楠は夏星河の青白い顔色を見て、心配そうに尋ねた。「お嫂さん、大丈夫ですか?この2日間、何かされましたか?」