夏星河は素直にワイングラスを持ち上げ、彼とグラスを合わせた。
赤ワインの味は素晴らしく、夏星河はこんなにリラックスして飲んだのがいつだったか思い出せなかった。
席牧白も同じような気分のようで、一口飲んで、嬉しそうな笑みを浮かべた。「この感じ、いいね」
彼女と一緒に飲むのが心地よかった。
それだけではなく、今は彼女と一緒にいるだけで、何をしても心地よく感じた。
離れていた間、ずっと彼女のことが恋しかった。
今、彼女に会えて、心は大きな満足感に包まれていた。
でも、まだ見飽きない気がして……
席牧白はゆっくりとワインを飲みながら、ずっと彼女を見つめていた。
彼の眼差しは深すぎて、複雑すぎて夏星河には何も読み取れなかった。
そう、彼女には理解できなかった。なんとなく分かっているようで、いつも曖昧で、はっきりしなかった。
彼女は他人の意図や多くのことを見抜くことができたが、感情に関してだけは、単細胞生物のような思考だった。
少し複雑なことは考えたくないという具合だった。
彼女の脳は生まれつき感情の判断が欠如しているようで、それ以外の面では、驚くほどの思考力を持っていた。
この点について夏星河自身は気づいていなかったが、席牧白は見抜いていた。
「私は飲み終わったけど、あなたは?」夏星河はグラスを置いて尋ねた。また話し合いをしたそうな様子だった。
席牧白は何とも言えない気持ちで尋ねた。「休んだらどう?まだ夜明け前だから、少し眠れるよ」
「必要ないわ。私はもう十分休んだから。あなたは?」
彼女が彼に問い返すのは、心配しているからではなく、話し合いをしたいからだった!
彼女が何を話したいのか、彼にはもう予感がついていた。
「夏星河、今夜は特別な夜だから、何も考えずに完全にリラックスしたらどう?」席牧白は彼女を諭したが、残念ながら夏星河には彼の苦心が全く分からなかった。
「私はもうリラックスしたわ。話し合いましょう、時間を無駄にしないで」
「……」
「いつ出発するの?」夏星河は彼をじっと見つめて直接尋ねた。
彼女は席牧白が一時的に戻ってきただけで、すぐにまた去ることを知っていた。
彼女の澄んだ眼差しの前で、席牧白は嘘をつくことができなかった。「……もう少しだけ」
つまり、今夜には出発するということだった。