だから、栄華富貴は一時の夢のようなもの。高い地位にいる人を羨む必要はない。いつ転落するかは誰にもわからないのだから。
そして、高ければ高いほど、転落は悲惨なものとなる。
そういう考えを持つ人は、多かれ少なかれ他人の不幸を喜ぶ心理がある。
席おじいさんは生涯の政治経験から、彼らの考えを見抜いていた。
「お父さん、お休みになられたほうがいいですよ。私一人で行きます」体力を心配して、席江年は静かに勧めた。
実際、おじいさんが年齢的にきついだけでなく、彼自身も疲れを感じていた。
周りの冷ややかな視線を感じるだけで、プレッシャーを感じていた。
これから法廷でどれほど辛い思いをするか、想像もつかない。
席おじいさんは彼の気持ちを理解していた。
背筋を伸ばし、威厳を持って言った。「覚えておけ。たとえ席家が没落しても、気骨だけは失ってはならん!こんな程度の困難など何でもない。若い頃は、何度も死に直面したことがある。もっと大きな困難も乗り越えてきた。これくらい何でもないわ!」
「はい!分かりました」席江年は恥ずかしそうに頷いた。
心の持ち方で言えば、彼は父親には及ばなかった。
しかし今からは、彼も恐れることなく全てに立ち向かっていく。
たとえ席家が没落しても、席家の気骨は失わない!
そして席おじいさんの言葉は、ちょうど近づいてきた林芸と封少煌の耳に入った。
林芸は笑い出した。「席おじいちゃんは本当に感心します。こんな状況でも、そんなに前向きでいられるなんて。その良い心がけが、席家に幸運をもたらすことを願っています」
彼らを見た席おじいさんの目は鋭くなった。
低く冷たい声で言った。「一つ忠告しておく。若いうちから邪道に入るな。さもないと、その結果は想像以上に深刻なものになるぞ!」
林芸は笑いながら言った。「席おじいちゃん、それはご自分の孫に言っているんですか?」
「お前たちなど、私の孫になる資格もない!」軽蔑した言葉を残し、席おじいさんは大股で立ち去った。
林芸は顔を歪めて怒った。
「この老いぼれ、よくもこんな侮辱を!」
封少煌は彼らの背中を冷冷と見つめながら、淡々と言った。「ただの言葉の応酬に過ぎない。気にする必要はない」
林芸の表情は少し和らいだ。