席牧楠は突然彼女に言った。「お義姉さん、彼女は逃げられないよ」
封少煌の罪状はもう確定している。
林芸は彼と協力関係にあったから、きっと何か後ろめたいことがあるはずだ。
彼女に問題があれば、必ず逃げられない!
たとえ問題がなくても、席家は彼女を許さないだろう。
とにかく、これらの出来事を経て、席家と林家は完全な敵同士となった。
しかも林家は明らかに席家に対して陰謀を企んでいるから、彼らは決して黙っていないだろう。
……
夏星河と席牧楠は一時的に釈放された。
今は封少煌が逮捕されたが、二人の嫌疑はまだ完全には晴れていない。
しかしそれは時間の問題で、基本的に最終的には無罪釈放されることは確実だった。
席おじいさんと席江年は若者たちの邪魔をせず、先に出て行った。
しばらくして、夏星河は席牧楠たちに囲まれて出てきた。
法院の門前で待っていた席牧白は、遠くから夏星河が数人の男性に囲まれて歩いてくるのを見た。
彼らは談笑していたが、全員の視線が夏星河を追っていた。
夏星河はずっと微笑みを浮かべ、あまり口を開かなかった。
しかし何故か、彼女には非常に強い魅力があった。
席牧楠たちのような優秀な男性たちでさえ、思わず彼女に惹かれていた。
たとえ彼らが夏星河を見る目が賞賛や崇拝の眼差しだったとしても。
それでも傍観していた席牧白はとても不快だった。
しかし席牧白は決して不機嫌な様子を見せなかった。
彼は魅力的で溺愛するような微笑みを浮かべながら前に出て、所有権を主張するように夏星河の手を取った。「すべて上手くいった?」
夏星河は頷いた。「うん、順調だった」
席牧白は嬉しそうに彼女の頭を撫でた。「よくやった。さあ、帰ろう。君も疲れただろう」
「うん」夏星河は頷き、彼に手を引かれて車に乗った。
席牧白は自ら彼女のためにドアを開け、彼女が座った後に自分も乗り込んで、それから...ドアを閉めて運転手に出発を命じた!
たった今釈放された席牧楠のことなど、まったく思い出しもしなかった!
「おい、兄さん...」去っていく車を見ながら、席牧楠は呆然と手を上げた。何か忘れているんじゃないか。
どうしてこんな大きな生身の人間を無視できるんだ。
「あれが君のお兄さんの席さんか」閆逵は少し憧れたように言った。「テレビで見たのと同じだな」