第551章 彼女の大博打

席家は寶華の株式を5倍に引き上げた。

これは林菁が予想もしなかったことだった。

彼女は、席家が3倍に引き上げるのが限界だと思っていたのに、自分が倍増したとたん、彼らもまた引き上げてきた。

席家が徹底的に戦う覚悟を決めたことは明らかだった。

以前なら、林菁は席家に対抗する自信があった。

しかし今、席家がこれほど命がけになると、少し不安になってきた。

結局のところ、寶華がいくら稼いでも、席家には及ばないのだ。

さらに値上げすれば、他の株主たちは必ず反対するだろう。

彼女側に立つ株主も何人かいて、彼女の持ち株も最大だが、他の株主たちの意向を完全に無視するわけにはいかない。

だから値上げは非常に難しい状況だった。

しかし値上げしないと、寶華が今の微妙な立場に置かれたままでは良くない。

最初から手を引いていれば、ここまで窮地に追い込まれることはなかった。

でも彼女は、席家が目もくれずにまた倍増するとは思いもしなかった！

だから彼女はさらに倍増すべきなのか？

まるでギャンブルのようだった。良い手札を引いたと思って、どんどん掛け金を上げていく。

しかし相手はさらに強気な賭けに出てきた。

相手が虚勢を張っているのか、本当に良い手札を持っているのか分からない。

前者なら良いが、後者なら...彼女は全てを失う可能性がある。

林菁は自負心が強かったが、この重要な局面で軽率な決断はできなかった。

彼女は株主総会を開いたが、誰も買収の規模を拡大することに賛成しなかった。

席家の株式を3倍にした時点で、資金不足を感じ、不安になっていたのだ。

5倍になれば、彼らは確実に耐えられないだろう。

「これは戦略です」林菁は威厳を持って分析した。

「席家の株式を全て買う必要はありません。5%以上の株式を持っている場合にのみ買い取るというルールを設けることができます。しかし5%以上を持っている人は少なく、もっと持っている人も売りたがらないでしょう。今我々に必要なのは勢いです。この勢いで、席家に押されてはいけません。さもなければ、我々の買収計画は失敗します。これまでの努力が水の泡になってしまいます」