第579章 この世が変わろうとしている

だから彼女は実際、席牧白の心臓を閉じ込める檻を設計したの？

突然そんなことを考えて、夏星河は首を振った。何を考えているんだろう。

この奇妙な考えを、夏星河はすぐに払い除けた。

そして科学者たちもついに良い知らせを持ってきた！

材料が完成し、実験を経て完全に彼らの要求を満たしていた！

この知らせを聞いて、夏星河はとても喜んだ。

彼女だけでなく、席家の人々も、陸祈たちもみな喜んでいた。誰もが希望の光を見たかのように、心の底から喜びを表していた。

夏星河も時間を無駄にせず、すぐに製造に取り掛かった。

今回は、彼女は完全に実験室から出なくなった。食事も睡眠もそこで取っていた。

数人の科学者が彼女と共に奮闘し、彼らはほとんど昼夜を問わず、寝食を忘れて……

席家の人々も様々な苦悩を抱え、実験が成功するかどうか分からなかった。

陸祈もこのことをとても心配していた。

今や彼らが唯一気にかけているのはこのことだけで、世界の他のことは全て彼らとは無関係のようだった。

しかし世界では大事件が起きた！

大統領が突然重体となり、命が風前の灯となった。

このニュースが出るや否や、真夜中にもかかわらず、席家は直ちに緊急家族会議を開いた。

夏星河も呼び出された。

本来なら彼女は実験中で、邪魔されたくなかったのだが、席家は彼女を呼び出した。

しかもこんな遅い時間に。

事態の緊急性が窺える。

すぐに全員が揃い、訓練中だった席牧楠も呼び戻された。

書斎の雰囲気は厳粛で、夏星河だけが唯一の女性だった。

全員が揃ったのを見て、席おじいさんは重々しく言った。「皆を呼び集めたのは、非常に重要な事を伝えなければならないからだ。大統領が重体で、情勢が変わろうとしている。」

一同は驚愕した。

席牧楠は思わず言った。「どうして私は全く風の噂も聞いていなかったんでしょう？」

「このニュースは半月間封鎖されていた。今になってようやく隠しきれなくなってきたんだ。私も今知ったところだ。」席おじいさんはこう言いながら、少し暗い表情を浮かべた。

彼が退職してから、政治の中心から離れてしまったようだった。

こんな大きな出来事さえ今になって知ったことで、自分は本当に年を取り、役立たずになったと感じていた。

「お父さん、その情報は確かなんですか？」席江年は低い声で尋ねた。