第584章 林おじいさんは真相を見抜いた

彼女は端正な態度で説明した。「本来ならあなたたちと相談するつもりでしたが、最近少し疲れ気味で、つい忘れてしまいました。でも陸祈は陸しゅちょうの孫で、醫術も素晴らしく、絶対に信頼できる人です。」

林おじいさんは優しく笑いながら、「それはもちろんです。彼は確かに信頼できる人でしょう。ただ、若すぎて落ち着きがないのではないかと心配なだけです。」

大統領夫人は微笑んで言った。「そんなことありませんよ。席家の状況はご存知でしょう。あの時、席牧白はもう危篤状態でしたが、他の醫者では助けられなかったはずです。でも今は、陸祈のおかげで救われました。私も昨日の朝のニュースを見て、彼のことを思い出したんです。」

林おじいさんの目に一瞬冷たい光が走った。

またしても席家か！

席牧白が救助された知らせは、彼も知っていた。知りたくなくても知らざるを得なかったのだ。

席家があれほど派手に寄付をしたため、この件は全国に知れ渡っていた。

だから彼は席家が故意にやったのではないかと疑っていた。

おそらく彼らは大統領の健康状態を知っており、一旦交代となれば林家の時代が来ることも分かっているのだろう。

だからこそ、彼らは意図的に陸祈を宣伝したのだ。

目的は陸祈を大統領の治療に呼ぶことだった。

大統領を治せば、交代しなくて済むと思っているのだろうか？

ふん、治せるかどうかは、また別の話だ！

さすがに林おじいさんは真相を見抜いていた。彼は一発で席家の目的を見破ったのだ。

しかし彼も自負していた。陸祈は大統領を治せないだろうと。あれほど優れた醫者たちでも手の施しようがなかったのだから、若い陸祈に何ができるというのか。

どんなに優れていても、大したことはできないだろう。たとえ大統領の容態を安定させられたとしても、大統領はそう長くは持たないはずだ。

だから陸祈も治せないはずだ。

しかし林家が今日まで来られたのは、運だけではない。林おじいさんは依然として慎重で、陸祈が本当に治せるかもしれないことを恐れていた。

幸い、すぐに陸祈は大統領の診察を終えて出てきた。

「どうでしたか？」大統領夫人が前に出て尋ね、林おじいさんも続いて前に出た。

二人とも期待に満ちた眼差しだったが、期待する内容は全く正反対だった。