第609章 大統領府に単独で押し入る

「そうであってほしい……」大統領夫人が言い終わるや否や、大統領の電話が鳴った。

秘書からの電話で、席家の席牧白が面会を求めているとのことだった。

大統領は驚いて、「席牧白?」

「はい、もしお会いいただけないなら、自分が何をするか分からないと言っています」秘書は不安げに報告した。席牧白は明らかに大統領を脅していて、随分と大胆だった。

彼の特別な身分がなければ、秘書は直接軍隊を派遣して彼を逮捕させようと思ったほどで、取り次ぐなど考えもしなかっただろう。

大統領はそれを聞いて、やはり驚いた様子だった。

席牧白が自分を脅すとは……

しかし怒る様子もなく、何かを思い出したのか、すぐに「会わせなさい」と言った。

「承知いたしました」

「誰が来るの?」大統領夫人が不思議そうに尋ねると、大統領は溜息をつきながら答えた。「席家の席牧白だ」