「そうであってほしい……」大統領夫人が言い終わるや否や、大統領の電話が鳴った。
秘書からの電話で、席家の席牧白が面会を求めているとのことだった。
大統領は驚いて、「席牧白?」
「はい、もしお会いいただけないなら、自分が何をするか分からないと言っています」秘書は不安げに報告した。席牧白は明らかに大統領を脅していて、随分と大胆だった。
彼の特別な身分がなければ、秘書は直接軍隊を派遣して彼を逮捕させようと思ったほどで、取り次ぐなど考えもしなかっただろう。
大統領はそれを聞いて、やはり驚いた様子だった。
席牧白が自分を脅すとは……
しかし怒る様子もなく、何かを思い出したのか、すぐに「会わせなさい」と言った。
「承知いたしました」
「誰が来るの?」大統領夫人が不思議そうに尋ねると、大統領は溜息をつきながら答えた。「席家の席牧白だ」
大統領夫人は非常に驚いて、「彼の体調は良くなったの?きっと夏星河のことで来たのでしょうね」
「ああ、そうだろう」
席牧白はすぐに警備員に連れられて入ってきた。
彼は一人で来ていたが、車椅子に座り、警備員に押されて入ってきた。
そして彼の後ろには、少なくとも10人の警備員が付いていた。
彼らは全員が彼を警戒し、何か行動を起こすのではないかと心配していた。
しかしこれほど多くの警備員に監視されていても、席牧白は少しも動揺する様子もなく、非常に落ち着いていて、その雰囲気も強かった。
彼を見て、大統領と大統領夫人は心の中で感慨深げだった。
大統領府に単身で乗り込んでくるとは、この若者は度胸がある。
そして彼らを見た席牧白も、ただ落ち着いて挨拶をし、そして直接言った。「申し訳ありません。こんな形で邪魔するつもりはありませんでした。ただ、私の婚約者がここに来てから行方不明になったので、少し焦っているのです」
大統領は理解を示すようにうなずいた。「君の気持ちは分かる。だが、ここに無断で入るべきではなかった。今回は君の祖父の顔を立てて、咎めないでおくが、次にこのようなことがあれば、そう簡単には済まないぞ」
「ご安心ください。夏星河に何もなければ、私も何もしません」席牧白は淡々と答えた。
大統領と大統領夫人は驚いた。
つまり、もし夏星河に何かあれば、彼らに対して何かするというつもりなのか?