警備員は彼の視線と一瞬合い、思わず心が揺らいだ。
それは彼が今まで見たことのない恐ろしい眼差しだった。
氷のように冷たく、漆黒で光の欠片もない。
まるで地獄から来た修羅のようだった。
警備員は心理的な素質が良く、特殊訓練も受けていたが、席牧白のこの凍てつくような眼差しの前では、思わず恐れを感じずにはいられなかった。
しかし、彼の目に浮かんだ不安は一瞬で消え去った。
「はい」彼は冷静に答えた。
席牧白は鋭く彼を見つめ、再び尋ねた。「では、出来事の経緯を話してください。会話の内容も含めて、一言も漏らさず全て話してください」
この件については、警備員は既に尋問した人に話していた。
今、彼はもう一度繰り返した。
「夏さんを送り出した後、彼女は別の道を行くように要求し、目的地に着いたら降車すると言い、私一人で戻るように言われました。そして彼女は別の車に乗って行きました」