警備員は彼の視線と一瞬合い、思わず心が揺らいだ。
それは彼が今まで見たことのない恐ろしい眼差しだった。
氷のように冷たく、漆黒で光の欠片もない。
まるで地獄から来た修羅のようだった。
警備員は心理的な素質が良く、特殊訓練も受けていたが、席牧白のこの凍てつくような眼差しの前では、思わず恐れを感じずにはいられなかった。
しかし、彼の目に浮かんだ不安は一瞬で消え去った。
「はい」彼は冷静に答えた。
席牧白は鋭く彼を見つめ、再び尋ねた。「では、出来事の経緯を話してください。会話の内容も含めて、一言も漏らさず全て話してください」
この件については、警備員は既に尋問した人に話していた。
今、彼はもう一度繰り返した。
「夏さんを送り出した後、彼女は別の道を行くように要求し、目的地に着いたら降車すると言い、私一人で戻るように言われました。そして彼女は別の車に乗って行きました」
「途中で降車すると言ったのに、何も聞かなかったのか?」
「聞きました。用事があるから、そこまで送ってくれれば良いと言われました」
「だからあなたは彼女を降ろしたのか?」
警備員は相変わらず冷静に答えた。「はい、彼女が降車を強く主張したので、私にも止める術がありませんでした」
「お前は特殊訓練を受けた警備員だろう。彼女がどんな車に乗ったのか、ナンバーはなんだったのか?」
「車は黒のSUVでした。ナンバーはその時よく見ていませんでした」
席牧白は冷笑した。「よく見ていない?」
「はい」警備員は相変わらず動じることなく答えた。
席牧白は急に冷たい眼差しを向けた。「もう一度聞く。ナンバーは何だ!」
「言った通り、よく見ていませんでした。本当に分かりません」
「嘘をついている!」席牧白は鋭く低く吠えた。「夏星河は降車する前に携帯の位置情報システムを起動した。彼女が降車するとすぐに携帯は破壊され、位置情報システムも壊された。つまり彼女はお前の様子がおかしいことに気付いて、位置情報システムを起動したんだ。証拠を見せる必要があるか!」
警備員は愕然とした——
位置情報システムのことは知らなかった。
「もう一度聞く。誰が夏星河を連れて行った?誰の指示で連れ出したんだ!」席牧白は恐ろしい威圧感で詰問し、人を食らいそうな目で睨みつけた。