第613章 強情を張る

「彼女はどこにいるの?」大統領夫人は冷ややかに繰り返して尋ねた。

沈茹は真実を言わざるを得なかった。「彼女は二階で寝ているみたいです……」

「呼んで連れてきなさい!」大統領夫人は使用人に直接命令した。

使用人は従わないわけにはいかず、すぐに階段を上がって呼びに行った。

沈茹は急に不安になった。「お姉さん、嫣兒は一体何をしたの?どうしてそんなに怒っているの?彼女が分別のない子だということは分かっているでしょう。もし間違いを犯したとしても、あまり気にしないでください。」

大統領夫人は心を痛めながら言った。「今回は私が気にするかどうかの問題ではないの。彼女は自分自身を破滅させようとしているのよ!」

「何ですって?」沈茹の心臓が激しく鼓動し、不安は更に強くなった。

童嫣は一体何をしたというの……どうしてこんなに深刻なの?

「おばさま、どうしていらしたんですか?」童嫣は無邪気に階段を駆け下りてきて、車椅子の席牧白を不思議そうに見た。

しかし、彼の冷たさの欠片もない暗い目と目が合うと、思わず身震いした。

あの人は以前テレビで見た席牧白のようだ……

彼だと分かった途端、童嫣は血の気が引いて、胸に不吉な予感が走った。

もしかして、夏星河を誘拐したことがばれたの?

案の定、大統領夫人は彼女を見るなり怒って尋ねた。「聞くけど、夏星河をどこに連れて行ったの?早く彼女を返しなさい。」

まさか本当にばれてしまうとは。

童嫣は一瞬慌てたが、すぐに落ち着きを取り戻した。

彼女は無邪気な様子で目を瞬かせながら、「おばさま、何のお話ですか?私には分かりません。夏星河が見つからないことと私に何の関係があるんですか。」

「まだ認めないつもり?警備員は全て白状したわ。夏星河を誘拐したのはあなたよ。まさかあなたがこんな愚かなことをするなんて、本当に信じられないわ。」

「誘拐?」沈茹は顔色を変えた。

彼女は、ある女性が誘拐されたことを知っていた。その女性は席家と関係があるらしく、今やA市中の人々が彼女を探していた。

まさか、そんなことをしたのが自分の娘だとは思いもよらなかった。

沈茹は事の重大さを理解し、すぐに童嫣に尋ねた。「嫣兒、本当のことを言いなさい。あなたが誘拐したの?」