警備員にも良心はあった。ただ怖すぎて、本当のことが言えなかっただけだ。
一度嘘をついてしまうと、なおさら真実を語れなくなってしまう。
今、席牧白にこのように脅されて、もう耐えられず、すべてを覚悟して話し始めた。
「私を殺してください。この件は私の家族とは無関係です!夏さんを害したのは私です。すべて私の過ちです!童さんは私に彼女に会わせるように命じただけで、二人きりで話がしたいと言い、このことは誰にも言うなと。私は彼女が話をするだけだと思っていました。まさか誘拐するとは思いもしませんでした!嘘をつかせたのも童さんです。協力しなければ私に罪をなすりつけると言われました!彼女を罰することができる人は誰もいないからと!これはすべて私の過ちです。何でも私に向かってきてください。私は罰を受けるべきだと分かっています!」
警備員の叫び声に、他の人々は衝撃を受けた。
大統領夫人は驚いて叫んだ。「何ですって?嫣兒が夏星河を誘拐したというの?」
大統領も非常に信じがたい様子だった。
警備員は崩れ落ちるように頷いた。彼は童家と沈家の怒りを買ったことを知っていた。「はい、彼女です...」
席牧白は冷たく笑みを浮かべ、淡々とした目で大統領夫人を見つめた。「夫人、それでは安全に彼女を連れ戻していただくしかありませんね。」
大統領夫人は非常に怒っていた。童嫣がこのようなことをするとは思ってもみなかった。
「今すぐ彼女に会いに行って、人質を解放させます。本当に彼女がやったのなら、決して庇いはしません!」
「私は夏星河が無事に戻ってくれば、それでいい。夫人、一緒に行かせてください。」席牧白はゆっくりと車椅子に座り、手に持っていた銃を投げ捨てた。
警備員の一人が素早く銃を拾い上げ、彼らは依然として警戒して銃を向けたままだった。
しかし、誰も彼を逮捕しようとはしなかった。
大統領が命令を出さなかったからだ...
それどころか、大統領は以前、軽はずみな行動を取らないよう暗に示唆していた。
さらに、彼らは先ほどの席牧白の脅しを聞いて、軽率な行動は取れなくなっていた。
彼が死んだら、本当に國の経済が崩壊するかどうか、誰にも分からない。
しかし、彼にはそれだけの力が確実にあった。