第678話 この名前は特別だ

普通の女性なら、多少なりとも恥ずかしさと喜びを感じるはずだ。

しかし、夏星河は普通の女性ではなかった。

彼女は賀蘭祺の興味深げな機嫌取りを全く感じていないようだった。

「賀蘭ぼっちゃん、今回は私たちがご迷惑をおかけしますが、親族を探すのにご協力いただければと思います。もし見つかりましたら、沈家から必ず厚く御礼させていただきます。」

賀蘭祺は彼女のそのような落ち着き払った態度を見て、他の女性に使う小手先の技を少し控えめにした。

「もちろんです。夏さん、ご安心ください。お力になれることは私たちの光栄です。必ずお力を尽くして、お探しの方を見つけ出すお手伝いをさせていただきます。」

「ありがとうございます。」

「どういたしまして。では皆様、車にお乗りください。これから賀蘭別荘までご案内いたします。」賀蘭祺はそう言うと、非常に気遣わしげに夏星河のためにドアを開けた。

夏星河たちは自然に車に乗り込み、彼について賀蘭別荘へと向かった。

道中、賀蘭祺は熱心に夏星河に日本の風土や文化について紹介した。さらに、主人としてのもてなしを尽くすため、しばらくの滞在を心からの誠意を込めて勧めた。

しかし夏星河は毎回、ごく簡単な返事で済ませるだけだった。

彼がどれほど熱心であっても、彼女の態度は終始変わることなく、常に淡々としていた。

それどころか、彼女の感情には少しの揺らぎも見られなかった。

このため賀蘭祺は彼女の本心を全く読み取ることができず、彼女が何を考えているのか分からなかった。

賀蘭祺は数多くの女性と付き合ってきた。

しかし、彼は認めざるを得なかった。夏星河は彼が唯一読み取れない女性だった。

おそらく手なずけることもできないだろう。

だが彼は自分の魅力を信じており、意識的にも無意識的にも夏星河に近づこうとし続けた。しかし残念ながら、夏星河は依然として石のように無反応なままだった。

ついに、長い車の旅を経て、彼らは賀蘭別荘に到着した。

賀蘭別荘は広大な敷地を有し、日本で最も高級な地域に位置しており、警備体制も万全だった。

外部の人々が彼らについてほとんど知らないのも無理はなかった。

別荘内の建物も大きく、壮大な建築様式と環境から、賀蘭一族が確かに巨大な一族であることが見て取れた。