387.この世界は狂っている

手錠を持った警察官が彼女の言葉を遮り、蘇柔の手に手錠をかけた。冷たい金属の感触に蘇柔の体が震え、振り返って蘇素琴に助けを求めるように見た。

「ママ、助けて、ママ……」

「柔ちゃん、一体どうしたの?」

蘇素琴も慌てた。先ほど喬家の門前で娘が見せた様子を思い出し、心が沈んだ。

「何かあれば警察署で話せばいい。時間を無駄にするな」

警察官は母娘に話す機会を与えず、蘇柔を直接パトカーに乗せた。

蘇素琴は顔面蒼白になって立ち尽くし、蘇柔が連れて行かれるのを見ていた。突然体の力が抜け、その場に崩れ落ちた。

「ど…どうしてこんなことに……」

企業秘密の漏洩は、刑務所行きになる可能性があるのだ。

柔ちゃんはまだ26歳で、明るい未来があった。今や喬さまに入る機会もあったのに、どうして刑務所に行くことになるのか。

「そうだ、盛さんに電話しなきゃ……」

蘇素琴は慌ててバッグから携帯電話を取り出し、喬盛に電話をかけた。

喬栩は蘇氏母娘が今どんな大きな問題に巻き込まれたのか知らず、落ち着いてから再び階下に降りた。

「陳ママ」

「お嬢様、何かご用でしょうか?」

「後で病院に行ってお爺さまを見舞うわ。スープを作っておいて、お爺さまに持っていくわ」

「かしこまりました、お嬢様」

陳ママに指示を出した後、喬栩はC市にいる母親に電話をかけ、喬一の様子を尋ねた。

林媛の陸墨擎に対する気持ちに気づいてからは、最初はあまり気にしていなかったが、その後の林媛の態度に警戒心を抱くようになった。

林媛自身は気づいていないかもしれないが、彼女が自分を見る目にどれほどの怨みがあるか、喬栩には分かっていた。

はっきりと言わなかったのは、林媛が喬一の世話を非常に丁寧にしていたからで、林媛を困らせたくなかったからだ。

しかし、それでも喬一を軽々しく危険にさらすわけにはいかなかった。この世の中には狂った人間がいる。特に林媛が何度も彼女に対して強い敵意を示した状況では、喬一を単独で林媛に任せ続けることはできなかった。

そのため、C市を離れる前に、喬一を母親に預けて世話をしてもらうことにした。そうすることで、A市で個人的な用事を処理する間も安心できた。

「ダーリン、おばあちゃんのところでいい子にしていてね。いたずらしちゃだめよ、わかった?」

「わかったよ」