590.もう二度と君を失いたくない

彼の言葉を聞いた喬栩は、横目で彼を見やると、ちょうど彼も振り向いて彼女を見ており、二人の視線がぴったりと重なった。

その深い瞳には、隠すことのない深い愛情が滲み出ており、喬栩は無視したくても無視できなかった。

陸墨擎は手を上げ、優しく彼女の頬に触れ、指先でゆっくりと彼女の顔の輪郭を一つ一つなぞっていき、その眼差しはますます柔らかくなっていった。

「よかった、やっとあなたを見つけることができた。今生の限り、もう二度と失いたくない。」

彼は優しく彼女の顎を持ち上げ、身を屈めてゆっくりとキスをした。

以前の数回の強引で激しいキスと比べて、今回の彼のキスは非常に優しく、慎重な気遣いと安らぎを感じさせるものだった。

喬栩は、そこに畏敬の念を伴う感謝の気持ちも味わった。

彼女の心臓は、彼のキスによって思わず早鐘を打ち始め、思わず彼の肩に手を回し、少しずつ彼に応え始めた。

徐々に、最初は優しかったキスが、息遣いが激しくなるにつれて情熱的になっていった。

理性が燃え上がる欲望に少しずつ飲み込まれていく時、部屋のドアがノックされた——

「コンコンコン！！」

「パパ、ママ！」

息子の声を聞いた喬栩は、さっきまで失っていた理性を一気に取り戻した。

陸墨擎を自分の前から強く押しのけ、彼の不満げな表情も気にせず、何度も深呼吸をして呼吸を整え、顔や体の熱が徐々に下がっていくのを待った。

陸墨擎の表情は良くなかった。大事な場面で奥さんに押しのけられるのは、決して良い気分ではなかった。

そして、その元凶は、あの小僧だった。

喬栩がドアを開けようと振り向いた時、彼は強引に彼女の手首を掴んで自分の胸元に引き寄せた。「開けないで。」

「息子が外で待ってるのよ。」

「そのまま待たせておけ！」

彼は掠れた声で、不機嫌な表情を浮かべながらも、どこか哀れっぽく言った。「奥さん、辛いんだ……」

二人の体は密着しており、喬栩は自然と陸墨擎の体の生理的な変化を感じ取り、陸墨擎が何を言おうとしているのかよく分かっていた。

この男はそういう面で、毎回まるで一生肉を食べていない飢えた狼のように、全く節制がなかった。

昨夜も彼に激しく求められ、骨も残らないほど疲れ果てた今、喬栩が彼の望みを叶えるわけがなかった。

「自分で蒔いた種でしょ。私のせい？」