594.堂々と奥さんの入浴を覗く

「ん？」

宋域は振り返って陸墨擎を見た。

お婆様と比べて、陸墨擎の態度は冷たかった。「陸昕瞳がまだ改心しないなら、我慢できないなら離婚すればいい。私の妹を躾けられなかったのだから、お前を苦しめ続ける理由もない」

その言葉を聞いて、宋域は軽く笑った。「兄さん、どう言っても私の奥さんですよ。私の前で離婚を勧めるなんて、少し不誠実じゃないですか」

彼は結局、陸墨擎の言葉を気にせず、陸家の門を出た。

宋域の背中を見つめながら、お婆様は溜息をついた。「瞳瞳が大切にしてくれることを願うわ。域くんを失えば、一生域くんより良い男性は見つからないでしょう」

陸墨擎はお婆様の言葉に返事をしなかった。陸昕瞳については、幼い頃から両親がいなかったため、この妹を甘やかし続けてきた。

彼は陸昕瞳に対して、仁至義盡を尽くしてきたと言える。

しかし陸昕瞳は、この兄をどう報いたのか？

兄の結婚生活を何度も壊し、彼の再三の警告にもかかわらず、お義姉さんに対して悪態をつき続け、兄の気持ちを全く考慮しなかった。

そうであるなら、兄として妹を認めないのも仕方がない。

一方、喬栩は元々陸昕瞳が好きではなかったので、陸昕瞳に関することには一切関わらないようにしていた。

陸昕瞳が彼女に関わってこなければそれでよかったが、もし挑発してくるなら容赦はしない。

そう考えながら、喬栩は思慮深げに陸墨擎を見やったが、ちょうど彼の視線と合ってしまった。

罪悪感からか、慌てて視線を逸らし、黙々と食事を続けた。

宋域は陸家にそれほど長居せず、陸昕瞳の罵声も聞こえなくなったので、彼女が落ち着いて外で待っているのだろうと思った。

しかし外に出てみると、陸家の門前には既に宋家の車の姿はなく、表情は複雑になった。

ずっと外で待機していた執事は、宋域を哀れむような目で見ていた。

近寄って、小声で言った。「旦那様、お嬢様は数分前に出発されました。お車を手配してお送りいたしましょうか」

「ああ」

宋域は沈んだ表情で応え、心の中で失望とともにため息をついた。

夕食後、喬一坊ちゃんは自ら進んでひいおばあさまと話をすると言い出し、お婆様は嬉しそうに眠気も忘れていた。

陸墨擎にとって、あの邪魔者が夫婦から離れてくれるのは願ってもないことで、邪魔者がついてこないことが一番嬉しかった。