743.彼女は本当に飲み干した

「彼女は本当に飲んでしまったわ。賢いと思っていたけど、私の見込み違いだったようね」

嚴妤菲は軽蔑的な口調で、少し得意げに言った。

元々、喬栩に気付かれるのではないかと心配していた。あんなに自信満々だった秦舒宜が、突然自分と仲の悪い義理の娘に謝りに行くなんて、誰でも疑うはずだから。

喬栩は賢いから、秦舒宜の罠にはまらないと思っていたのに...彼女は喬栩という女の知能をまだ高く評価しすぎていたようだ。

あんな頭では、陸墨擎に相応しくないわ。

嚴妤菲はあんな素晴らしい男性が、自分のものではないことを考えると、胸が苦しくなった。

一方、秦舒宜は喬栩が目印をつけたシャンパングラスを手に取って飲み干した時、宙ぶらりんだった心が、やっと落ち着いた。

少なくとも、彼女の計画は成功し、嚴おくさまの座は守られた。

あの所謂義理の娘なんて、この姑を敬う者こそが義理の娘。喬栩のような賤しい女は、何度も口答えして、皮肉を言って、そんな女を義理の娘として認めるわけがない。

ふん！

「今夜が過ぎれば、あの賤しい女が私たちの前でどう威張れるか見物ね」

心の重荷が下り、喬栩が直面することになる全てを想像すると、秦舒宜は思わず胸を張って喜んだ。

目線に媚びを含ませながら秦舒宜を見て、「菲菲、私は約束したでしょう。墨擎を手に入れさせてあげると。今夜が過ぎれば、喬栩はもうおしまいよ」

嚴妤菲は彼女を一瞥し、珍しく賞賛の色を見せた。「今回はよくやったわ。あの賤しい女が棟樑の下で乱れる姿が今から待ち遠しいわ」

秦舒宜も笑いながら、「後で島中の人を連れて見物に行きましょう。そうすれば、国際的に恥をさらすのは彼女よ。私の息子が世界中に知れ渡る緑の帽子を被せられたことを知ったら、あの淫らな奥さんにどんな仕返しをするのかしら」

嚴妤菲は、秦舒宜が自分に取り入るために陸墨擎と喬栩を貶める言葉を聞いて、この女の「外に肘を向ける」激しさに感心した。

喬栩を軽蔑するのは理解できる。結局、喬栩は他人だから。でも陸墨擎は、彼女が十月十日お腹を痛めて産んだ息子なのに、外部の人に取り入るためにこうして自分の息子を陥れ、さらには手段を選ばず息子にこんな大きな緑の帽子を被せるなんて、本当に感心するほかない。

否応なしに、陸墨擎は本当に不運だと思う。こんな実母を持つなんて。