「これで神の天子たちは大変なことになったな。全滅するかもしれないぞ。神血狐王がよくやってくれた!」韓森は心の中で喜びながら、谷の外で待ち構えていた。もし神の天子が中で死ななかったら、自分が飛び出して止めを刺すつもりだった。
彼はずっと神の天子を殺したいと思っていたが、なかなか機会がなかった。神の天子自身が強すぎる上、いつも強者たちを周りに従えていて、手を出す隙がなかったのだ。
こんな良い機会を逃すわけにはいかないと、韓森は思った。
神の天子たちはすぐに淡い金色の虫に囲まれてしまった。虫があまりにも多く、とても避けられる状況ではなかった。
「突っ切るぞ」神の天子は歯を食いしばって外へ向かって突進した。
一行は淡い金色の虫を踏みつけながら外へ向かって突進した。虫は韓森が想像していたよりも脆く、踏まれるとすぐに死んでしまった。
しかし虫の数があまりにも多く、彼らが大量の虫を踏み殺す一方で、多くの虫が彼らの体に這い上がり、服の中に入り込もうとしていた。
「ああっ!」悲鳴が次々と上がり、韓森は背筋が凍る思いと同時に大きな喜びを感じた。こいつらはとっくに死んでいるべきだったのだ。
「俺の後ろについて来い!」その猛者の谷兄が大声で叫び、手にした巨大な槌を振り回すと、虫も砂も一緒くたに吹き飛ばし、幅二メートル以上、長さ三メートル以上の溝を作り出した。
猛者は大槌を振り回しながら前進し、目の前の砂と大量の虫を四方八方に吹き飛ばし、まさに生きる道を切り開いていった。
神の天子たちは猛者の後ろについて、このようにして谷の外へと突き進んでいった。
「くそっ、あの猛者は一体誰なんだ。神の天子がまだ死んでいないとは!」韓森は心中で大いに不満を感じた。
神の天子たちが谷から飛び出してきたが、淡い金色の虫たちは何故か追いかけてこなかった。全ての死体を食い尽くすと、またゆっくりと砂の下に潜っていった。
前後二、三十分ほどの出来事だったが、谷の中は再び静けさを取り戻し、血の一滴も残っていなかった。まるで何も起こらなかったかのようだった。
神の天子の部下たちの鎧は至る所がボロボロになり、噛まれた傷から血が流れていたが、幸い全て表面的な傷で、体についていた虫も全て叩き殺していた。
「くそっ、あの狐の王は本当に狡猾だ」神の天子の部下の一人が傷の手当てをしながら罵った。