第219章 悪魔の手

「このチンピラ、何してんの?」紀嫣然は笑いながら尋ねた。

  「何でもないさ、ただ奴が今後『神の手』って聞くだけで吐き気を催すようにしてやっただけだ。俺の彼女に手を出そうなんて、代償は高くつくぜ」韓森は目を細めて、酸っぱそうに言った。

  紀嫣然は顔を赤らめて何も言わなかったが、心の中では少し甘い気持ちになっていた。韓森が嫉妬する姿は好きだった。

  陸博濤は心の中で狂喜した。昨年、彼は『神の手』の各校チームの宣伝映像を見て、黒鷹軍事学校のこの女性選手、紀嫣然にとても魅了されていた。

  残念ながら、黒鷹は中央軍校の前に立つことすらできず、8強にも入れなかったので、紀嫣然に会う機会は全くなかった。

  様々な調査を経て、陸博濤はようやく紀嫣然の天網対戦プラットフォームでのIDを知ることができた。しかし、フレンド追加しようとしたら、相手はフレンド申請を受け付けない設定になっていて、陸博濤はしばらく落ち込んでいた。

  元々陸博濤はこのことをほとんど忘れかけていたが、今日まさかランダムマッチで紀嫣然とマッチングするとは思わなかった。

  最初は相手が紀嫣然だとは気づかなかったが、一戦プレイして相手のスキルがなかなか良いと感じ、相手のIDをよく見てみると、どこか見覚えがあるような気がした。よく考えてみると、それが紀嫣然のIDだと分かり、すぐに大喜びした。

  心の喜びを抑えながら、さらに紀嫣然に数回勝利し、自分の強力な実力を示してから、やっとメッセージを送って相手が紀嫣然かどうか尋ねた。

  相手が本当に紀嫣然だと知ると、陸博濤はさらに喜びを抑えきれず、全神経を集中させて、自分の技術をしっかりと紀嫣然の前で披露し、強力な実力を見せつけようと準備した。そうすれば、美人を射止める機会があるかもしれない。

  「おい、濤くん、何をニヤニヤしてるんだ?」ルームメイトの梁一鳴は、陸博濤が一人でニヤニヤしているのを見て、不思議そうに尋ねた。

  「一鳴、俺が対戦プラットフォームで誰に出会ったと思う?」陸博濤は興奮して言った。

  「誰だよ?まさか俺たちの学校のあのモンスターじゃないだろうな」梁一鳴は適当に言った。