「もう行こう。見る必要はないし、見るものもない」京極霧が先に立ち上がった。
「やはり凄い奴だな。明日の対戦が楽しみだ。ただ、周りの連中が弱すぎるのが残念だ」秦城の目にも火花が散った。韓森と同じタイプの選手として、韓森の判断力に感心し、戦意も湧いてきた。
人生には対戦相手がいないことを恐れることはないが、自分と同じ思考レベルの相手に出会うことは極めて稀なことだ。
秦城は韓森の試合を観戦しながら、常に韓森の立場に立って、自分ならどうするかを考えていた。結果として、韓森の選択は彼の考えと完全に一致していた。
進行速度、ルート選択、射撃のタイミング、そして方文定たちの隠れ場所の判断まで、韓森は彼の選択と寸分の違いもなかった。
まだ韓森と対戦していないものの、秦城の目には、韓森はすでに最も手強い相手であり、最も打ち負かしたい対戦相手となっていた。
今の秦城の韓森を倒したい気持ちは、京極霧よりもはるかに強く、むしろ韓森のチームメイトがもっと強ければいいのにとさえ思っていた。そうすれば、より痛快な一戦が期待できるからだ。
中央軍校が静かに試合場を後にした。彼らが会場を出るや否や、観客席からは再び大きな歓声が沸き起こった。どうやら韓森たちが勝利を収めたようだった。
わずか3分間の試合は、マンス軍校にとって間違いなく悪夢だった。射撃の機会すら得られず、顔を出すだけで即座に撃ち落とされた。韓森の矢は まるで目を持っているかのように、神の視点から全てを見通しているかのようだった。
弓矢は銃器とは異なり、いつでも射撃できるわけではない。どんなに速くても、弓を引いて矢を放つための空間と時間が必要で、完全に隠れたまま射撃することは不可能だ。そのため、方文定は最後まで射撃の機会を得られなかった。
「ハハハ、やはり5分もかからずに戦いは終わったな。馮先生は本当に先見の明があったな」
「神様は神様だな、あまりにも暴力的すぎる」
「方文定が勝つに決まってるって、馮おばさんはマジでふざけてる」
「666……」
「矢術の試合は思っていたより面白いな」
紀嫣然は長いため息をつき、小さな顔に喜色が満ちていた。先ほどまでの不快な気分は完全に吹き飛んでいた。