あの白い錠剤を口に入れると、すぐに清涼感が広がった。
彼女のかゆみのある喉は、清水に包まれたかのように、とても快適になった。
栗原奥様は水を飲まずに、直接薬を飲み込んだ。
「ゴホッゴホッ…」
突然また咳き込んだ。
彼女は苦笑いし、さっきのほんの一瞬、この薬が効いたように感じたのだった。
…考えすぎたか。
栗原奥様はベッドに横たわり、目を閉じた。
これは神経性慢性咳嗽だ。二十年以上、どれだけの薬を飲み、どれだけの専門家に診てもらったことか。それでも治らなかった…
…
「静佳?静佳!起きて!」
栗原奥様はゆっくりと目を開け、ベッドの傍らに立つ栗原文彰を見た。部屋が昼のように明るかった。
病院の白熱灯はこんなに明るいのか?
彼女は少し困惑し、尋ねた。「何時?」