井上市川は少し驚いた。
昨日病院で会った恩人は、斉子の姑に髪を引っ張られてぼさぼさになっていたため、相手の顔をはっきりと見ることができなかった。
でも目の前のこの女の子の目元は彼女にそっくりだった!
井上市川は早足で近づき、確認しようとした。
しかしその時、エレベーターが到着し、栗原愛南と江口亜英がエレベーターに乗り込んだ。
彼が駆けつけた時には、エレベーターのドアがゆっくりと閉まるのを見ただけだった。
…本当に運が悪いな。
井上市川は焦らなかった。昨晩恩人から電話があった時、電話番号を残してくれたからだ。
森川グループとの交渉が終わったら、恩人に電話をかけることができる。その時に家族と相談して、どうやって彼女に感謝するか決めよう。
…
栗原愛南は井上市川に気づかず、江口亜英と一緒に研究開発第一グループに入った。