恩人

井上市川が2階に駆け上がったとき、床に寝かされて心肺蘇生を受けている妹の姿が目に飛び込んできた!

井上斉子は顔色が青ざめ、全身に力がない様子で、その姿を見た彼は心臓が締め付けられるような思いだった。

ここは病院なのに、なぜ最も原始的な方法で患者を救助しているのか?

機器はどこだ?

なぜ機器を使わないのか?

井上市川の頭の中に多くの疑問が浮かんだ。そして、中年の女性が妹に心肺蘇生をしている女性を殴っているのが目に入った…

彼女は女性の髪を引っ張りながら怒鳴っていた。「あっちに行きなさい!私の息子の嫁は救助なんて必要ないの!このまま逝かせてあげれば良いじゃない?うちには彼女の治療費を払う余裕なんてないのよ。あなたは私たちを死に追いやろうとしているの?」

斉子の夫も傍らに立っていた。「手術費用が1000万円で、その後毎月120万円の治療費がかかるんだ。俺は夫として無能だよ。妻を無理やり生き返らせたところで、俺たち家族はこの困難に直面しなければならない…義兄の家にもお金がないんだ。そうでなければ、妻が諦めるなんてことはなかったはずだ…」