栗原愛南はエレベーターから出て、第一グループの方に行こうとした。
しかし、二、三歩歩いたところで、背後から生田隼也の声が聞こえてきた。「栗原お嬢様、あなたと森川社長がどういう関係なのか知りませんが、森川社長の会社での評判があまりよくないことはお分かりでしょう。この権力者の座が将来誰のものになるかはまだ分かりませんからね!だから、森川副社長を敵に回さないほうがいいですよ。」
彼は森川辰の腹心で、これまでの接触を通じて、森川辰が栗原愛南に対して抱いている思いを見抜いていた。
彼は低い声で言った。「森川副社長についていけば、これからもっと良くなりますよ。少なくとも、あなたがこれから直面する問題を、森川副社長は解決する方法を持っています。」
栗原愛南は桃色の瞳で彼を無関心そうに一瞥し、何も言わずに第一グループに入った。
今日は月曜日で、楽しい週末を過ごした後、多くの人がこの日の出勤で遅刻しがちで、みんなぎりぎりに到着する。
しかし今日、第一グループの社員はすでに皆到着していて、休憩エリアに座り、江口亜英と張本健を囲んで、みな心配そうな表情を浮かべていた。
江口亜英は顔を引き締め、表情は暗かった。
栗原愛南が入ってくるのを見て、全員が突然立ち上がり、みな言いかけては止めた。
張本健が急いで近づいてきた。「愛南、大学の方は...」
言葉が終わらないうちに、研究開発部の部長と副部長の森川辰がすでに入口にいた。「江口亜英、栗原愛南、行こう。人事部が私たちを待ってるよ。」
江口亜英は眉をひそめて立ち上がり、栗原愛南を見た。「行こう。」
数人でエレベーターの方向に向かった。
道中、森川辰が突然口を開いた。「この二日間で私に電話をくれると思っていたよ。」
彼は勝ち誇った様子で、部長と江口亜英の前でも遠慮する様子はなかった。
栗原愛南は目を細めたが、何も言わなかった。
森川辰はさらに続けた。「そうそう、今日は総務部の人たち以外に、二人のお客様も来るよ。海浜大学の学長とエネルギー学院の学部長だ。学部長が君が南條博士の計画を盗んだという件を聞いて、君の学籍を取り消そうとしている。この件については知っているでだろう?」