竹歳明は呆然とした。
我に返ると、彼は急いで森川北翔の側に寄って言った。「森川社長、これは…突入するつもりですか?」
森川北翔は何も言わず、ただ正面玄関から後ろの拘置所へと真っ直ぐに歩いて行き、行動で示した。
竹歳は言った。「よくそんな大胆なことができますね!こんなことしていいんですか?」
森川北翔は足を止めずに、冷たく尋ねた。「じゃあどうする?お前の社長は明日まで待てるのか?」
「それは絶対に無理です!」
竹歳は彼のすぐ側にぴったりとついて行きながら言った。「社長のあの体では、今夜を乗り越えられません。以前一度、鉄分の補給が遅れただけで、社長はもうショック状態に陥って、危うく蘇生できないことがあったんです…」
ここまで話すと、彼も焦ってきて、すぐに怒って言った。「社長の病気は確かに奇妙です。誰だって信じないでしょう。きっと私たちが嘘をついていると思うでしょう。確かにもう待てません!社長のためなら、命を懸けます!」
彼がここで独り言を言っている間に、森川北翔はすでに拘置所に向かって駆け出していた。
拘置所の警官はすぐにドアの前に立ちはだかった。「ここは刑務所です。関係者以外立ち入り禁止です!すぐに出て行ってください。」
森川北翔はまったく聞く耳を持たず、直接中に突入しようとした。
入り口から様子がおかしいと感じていた木村隊長が追いかけてきて、この状況を見るとすぐに銃を抜いて彼に向けた。「森川さん、すぐに止まってください。さもないと発砲しますよ!」
森川北翔は振り返って彼を見た。表情は冷静だった。
竹歳はブルブル震えながら、その黒々とした銃口を見つめ、両脚が震えるのを感じた。
これは恐しすぎる!
二人が足を止めるのを見て、木村隊長はほっとした。
森川北翔の身分については知っていた。森川家の実権者だ。簡単に拘束できる相手ではない。彼はすぐに言った。「森川さん、なぜここに来たんですか?」
竹歳は栗原愛南のためだと言おうとしたが、森川北翔が彼を制した。「トイレに行きたくて、気がついたらここに来てしまったんです。」
竹歳「?」
彼は驚いて森川北翔を見た。心の奥が急に冷たくなった。
そうか、社長と彼の結婚は唐突なものだった。銃口を向けられて、森川北翔が危険を冒したくないと思うのも不思議ではない。