ツーショット写真

井上市川は返事をした。【分かった。】

井上のお母さんもグループチャットのメッセージを見て、笑いながら井上のお父さんを見た。「あなたったら…栗原奥様が何年も育てた娘を間違えるわけないでしょう!きっとあなたの記憶違いよ。もう何年経ったか分からないくらいなのに!」

井上のお父さんは笑って言った。「確かに南條奥様の容姿や声は覚えていないな。二十年以上会っていないからね。でも栗原お嬢様が彼女に似ているかどうか、写真を見れば分かるんじゃないか?」

井上のお母さんがまだ何か言おうとしたとき、一枚の写真が送られてきた。

井上のお父さんはすぐにそれを開いて、がっかりした様子で言った。「この写真は画像が劣化していて、よく見えない。全然分からないよ!」

井上のお母さんも注意深く見た。「確かに不鮮明ね。あなた、考えすぎよ!」

井上のお父さんはため息をついた。

そのとき、グループチャットで井上市川からメッセージが届いた【今は、写真館で古い写真を修復してくれるよ。父さん、持って行って修復してもらったらどう?】

井上のお父さんの目が輝いた【そうしよう。】

井上のお母さんは彼がこんなにしつこく言うのを見て、あきらめた様子で言った。「良いじゃない。でも写真の修復には時間がかかるはずよ。修復された写真が出来上がったら、よく見てみてね」

夫婦は顔を見合わせて笑った。

夜、井上斉子は名残惜しそうに栗原愛南に別れを告げた。「本当に一緒に夕食を取らなくていいんですか?一人だと寂しいですよ」

愛南は唇を曲げて笑った。「大丈夫です」

ある人が帰る前に、自分と夕食に付き合うと言ってくれたのだ。

井上家の人々が去ると、このVIP病室はやっと静かになった。

愛南は時計を見た。もう午後六時だった。

ドアの方から足音が聞こえ、彼女はすぐに顔を上げた。自分でも気づかないうちに期待の表情が浮かんていた。

「キィー」

ドアが開いた。

紀田亮が入ってきた。愛南の視線は彼の背後に向けられ、あの背の高い姿を探そうとしたが、残念ながら…いなかった。

愛南は少し驚いた。

紀田は咳払いをして、口を開いた。「栗原お嬢様、あの、社長は今夜少し用事があって来られなくなってしまいました。それで私に夕食を届けるように言ったんです」