暑い……
彼の身体は冷たかった。
特に彼の口腔内の息は清水のようで、栗原愛南はその中に浸りたくなった。
彼女と森川北翔はこの時期、互いに好意を抱いていたので、このまま成り行きに任せても問題はなかった。
この考えが、栗原愛南の抵抗をほぼ諦めさせた。
……だめだ。
栗原愛南は突然冷静になった。
彼女と森川北翔はただ互いに好感を持っているだけで、実際には明確な感情を表現したことはない、こんなことはできない……
この考えが、彼女に突然森川北翔の唇を噛ませた。
鉄錆のような甘さが瞬時に二人の口腔内に広がった。
森川北翔は痛みを感じ、彼女を離した。陶酔していた目つきが突然冴えた。
二人は一瞬見つめ合い、男は急に立ち上がった。
栗原愛南も急いで後ずさりし、距離を置いた。