栗原愛南は栗原奥様の実家が京都にあることしか知らなかったが、海浜市に来てからずっと、京都とは連絡を取ったことがなかった。
京都の方からも、実家の人が彼女を訪ねてきたことは一度もなかった。
しかし栗原奥様が前回姿を現したときには、井上家をあんなに丁重に扱わせた……
今回も藤原美里に何を言ったのか分からないが、彼女の態度を一変させた。栗原愛南は本当に、栗原奥様を育てた家がどんな家なのか知りたくなった。
森川おばあ様は首を振った。「分からないわ。あの方の出身はどこなの?」
藤原美里は笑って言った。「彼女は具体的な経歴は言わなかったわ。でも、京都のいくつかの名門とも知り合いだって言ってたわ。辰に人脈を紹介できるって。私たち森川家は北翔のせいで、京都との繋がりが薄いでしょう。もし辰が京都の市場を開拓できたら、きっと森川家をより高く遠くへと導けるはずよ。そうでしょう、おばあ様?」