栗原愛南は森川北翔と共に宴会場の裏口に入り、ちょうど表の間へ向かおうとしたとき、突然一人の使用人が横から走ってきた。
彼女は手に数杯のワイングラスを持っていたため、道がよく見えず、栗原愛南にぶつかりそうになった。
栗原愛南は反射的に腕を伸ばして防ごうとしたが、次の瞬間、腰を強く引っ張られ、森川北翔が彼女の前に立ちはだかった。
「ガシャン!」
ワイングラスが彼の背中にぶつかり、床に落ちた。
ワインは彼の白いシャツを汚してしまった。
「森川様、栗原お嬢様、申し訳ございません、申し訳ございません……」使用人は慌てて恐る恐る謝罪し、混乱して取り乱していた。
栗原愛南は目の前の背の高い男性を見つめていた。
以前は何かあっても自分で耐えていたが、たった今、守られている感覚を味わった。