第160章 写真の修復が完了!

夜も深まった。

  今夜の月は大きく、低く空にかかっていた。

  栗原愛南が外に出ると、冷気が襲ってきたが、むしろ爽快に感じた。私生児と罵られた怒りは、いつの間にか消えていた。

  彼女は前方に立っている井上のお父さんとお母さんを見て、近づいて尋ねた。「どうしたんですか?斉子に何か問題でも?」

  「いいえ」井上のお母さんが口を開いた。「私たちが帰ろうとしたとき、李という人が森川家の門の前で大声で罵っているのを見たの。少し注意した方がいいと思って」

  栗原愛南は一瞬驚き、すぐに言った。「ああ、そうですか」

  井上のお母さんとお父さんが戻ってきたので、何か重要なことがあるのかと思ったが、まさかこのことだけとは。

  彼女が疑問に思っている間に、井上のお母さんがまた口を開いた。「さっき江川に電話をして、修復した写真を早く持ってくるように催促したの。明日の晩、時間ある?私たちと食事をして、ついでに写真も見てもらいたいんだけど」

  栗原愛南は驚いた。

  これは井上のお母さんが今夜2回目にその写真のことを持ち出した。特に彼女に見せたがっている…

  なぜなのかはわからなかったが、井上のお母さんが彼女を害するはずがないことはわかっていた。そこで頷いて言った。「時間ありますよ」

  「よかった。じゃあ栗原お嬢様、明日の晩にお会いしましょう」

  井上のお母さんは彼女の手を軽く叩き、やっと振り返って井上のお父さんの腕を引いて外に向かった。

  井上のお父さんは小声で尋ねた。「なぜあなたの推測を言わなかったの?」

  「証拠もないのに、何を言えるの?もし間違っていたら、愛南を無駄に悲しませるだけじゃない?明日江川が来るから、夜に写真を持って話すのが一番いいわ。1日待つくらい大したことないでしょう」

  井上のお父さんは笑った。「そうだね、あなたの言う通りにしよう」

  二人の小声のささやきがかすかに聞こえてきたが、栗原愛南には何を言っているのかよくわからなかった。しかし、こうして二人が寄り添って小声で話し笑う様子を見ていると、何となく歳月静かに良いものだという感じがした。

  栗原愛南は栗原文彰が栗原奥様をいつも慎重に手のひらに乗せるように扱い、懸命に機嫌を取ろうとする様子を思い出した。それはあまりにも作為的で卑屈に見えた。