第173章 本当だ

栗原愛南は疑問に思いながら写真を受け取り、下を向いて見た。

  その写真は一目見ただけで年季が入っていることがわかった。当時の解像度はまだ十分ではなく、おそらく古い写真が傷んで修復されたのだろう、通常の写真よりも色が少し濃く見えた。

  写真には男女1人ずつが写っていて、おそらく何かのパーティーに参加しているようだった。背景はかなり華やかで、二人とも正装のスーツとドレスを着ていた。

  若い男性は20代半ばくらいで、井上市川に少し似ていた。栗原愛南はすぐにこれが井上のお父さんだと理解した。

  そして井上のお父さんの隣に立っている女性は...栗原愛南の瞳孔を縮ませた。

  この女性は気品があり、スタイルが良く、時代を感じさせるオーラを纏っていた。写真の解像度が低いため、30代半ばくらいに見えたが、栗原愛南は彼女の目つきから判断して、少なくとも40代前半だと思った。

  これが最も重要なことではなかった。重要なのは、この人が自分と7、8割似ているということだった!

  雰囲気ではなく、顔立ちが!

  栗原愛南は自分の五官をはっきりと覚えていた...

  子供の頃、家に客が来るたびに、栗原郁子と彼女を見て、思わず「栗原奥様によく似ていますね」と言われた。

  しかし、二人が母娘ではないとわかると、笑いながら「雰囲気が似ているだけで、顔立ちは似ていませんね」と言われた。

  そのため、栗原愛南は何度も鏡を手に取り、自分の五官を注意深く観察した。

  当時、彼女はどれほど自分の顔のどこか一つでも栗原奥様に似ていることを願っただろうか?

  しかし、そうではなかった。彼女と栗原奥様は目も、鼻も、そして口さえも違っていた...

  栗原愛南の心の底に徐々に失望が芽生えた。

  しかし、そのおかげで自分の五官と栗原奥様の顔を脳裏に深く刻み込むことができた。

  今、写真の女性は、10歳か20歳年上の自分のようだった。顔のベビーファットが少し取れ、五官がより鮮明になり、輪郭もより際立っていた...

  この人と血縁関係がないと言われても、栗原愛南は信じられなかった!

  彼女は驚いて井上のお父さんを見て、尋ねた。「これは誰ですか?」

  井上のお父さんは顎に手を当て、しばらく眉をひそめて考え込んだ。「南條奥様だと思います。」