第186章 病室に入る!

栗原愛南は森川北翔と栗原叔父さんが病室の右側にいるのを感じ取り、出るときはちらりと一瞥しただけで左側に向かって歩いていった。

そのため、廊下にいた栗原叔父さんはドアが開くのを見て、ただ軽く一瞥しただけだったが、すぐに彼女の後ろ姿に目が釘付けになり、目を細めた。

栗原愛南の後ろ姿は凛として、竹のような雰囲気を醸し出していた。

その雰囲気は、栗原奥様によく似ていた。

栗原叔父さんはこの私生児のことをずっと前から聞いていた。栗原奥様のそばで育ったため、彼女には栗原奥様の影があるのだと。

栗原郁子は外見だけが似ているにすぎなかった。

しかし栗原愛南は後ろ姿だけで、栗原奥様の雰囲気の7、8割を持っているようだった。

彼はほとんど貪るように、もう二度見した。

栗原愛南の中に若い頃の栗原奥様の姿を見出そうとしたが、残念ながら彼は20年以上も栗原奥様に会っていなかったため、栗原奥様の姿は彼の脳裏でぼやけてしまっていた。

栗原叔父さんは分別をわきまえて視線を引き離した。

栗原愛南は左側で曲がり、階段口に入ると、やっと電話に出た。彼女は尋ねた。「堅物さん、何かあったの?」

電話をかけてきたのは川内美玲だった。

彼女が一度切った後もまた電話をかけてきたということは、きっと何か用事があるのだろう。

川内美玲は言った。「広石博隆の判決が下りたわ。故意の殺人罪で、しかも計画的だったから、最終的に死刑の執行猶予付きになったの。明日には刑務所に移送されるはずよ。そうなったら私たちの管轄外になるわ。あなたに関する秘密を彼に話させることはまだできないの?」

栗原愛南は目を伏せた。「教えてくれてありがとう。あと2日ほど引き延ばせない?」

彼女には直感があった。広石博隆が話そうとしている秘密は彼女にとって極めて重要なものだと。

川内美玲はすぐに答えた。「問題ないわ。今すぐ移送延期の申請をするわ。明後日に延期させるわ。でも愛南、栗原郁子は広石博隆の子供を身籠っているのよ。この子供がいる限り、彼は子供の栄華のために絶対に話さないわ。私たちには彼の口を開かせる方法がないわ。」

「もう少し考えてみるわ。」

栗原愛南は電話を切り、目を細めた。

そして、ゆっくりとドアを押して戻っていった。