栗原叔父さんは目上の人なので、本来なら挨拶に行くべきだった。
まして森川北翔と栗原叔父さんの間には……
彼はちょっと考えただけで同意し、栗原愛南の方を見た。
栗原愛南はそれを見て彼の側に歩み寄った。
傍らの栗原井池は思わず咳払いをし、栗原奥様と栗原愛南の対立する立場を思い出し、また栗原愛南が馬上で彼を救ったことを思い出して、つい注意した。「叔父さんは性格が冷たいから、会ったら言葉を控えめにした方がいい。そうすれば叔父さんも君を困らせることはないだろう」
栗原愛南がちょうどうなずこうとしたとき、森川北翔が言った。「君は行く必要はない。ここで栗原奥様を見ていてくれ」
栗原愛南は一瞬驚いた。
栗原井池は驚いて言った。「おい、森川北翔、お前礼儀を知らないのか?叔父さんは一応目上の人だぞ。叔父さんが来たのに、お前の妻をここに置いていくのか?」
しかし森川北翔は彼を全く無視し、ただ栗原愛南の手の甲を軽くたたいた。「心配するな」
栗原叔父さんは強い性格の人で、栗原愛南に会えば必ず彼女を困らせるだろう。
そうであれば、森川北翔がどうして栗原愛南を自ら恥をかきに行かせるだろうか。
彼はこう言い残して、身を翻して出て行った。
栗原愛南はその場に立ち、彼の背中を見つめていた。
栗原井池は口から「ちっ」という音を二回出し、続いて栗原愛南を上から下まで眺めた。「本当にお前のどこがいいのか分からないな。森川北翔がお前のために叔父さんを怒らせるなんて。栗原愛南、本当に行って見ないのか?行けば、せいぜい叔父さんに叱られるくらいだ。行かなければ、森川北翔と叔父さんが対立することになるぞ」
栗原愛南は彼を軽く見つめ、そっと言った。「私は彼を信じています」
彼女は森川北翔と一緒にずっとおばあちゃんの世話をしていたので、あの男が毎日忙しくしていることについて、多少は理解していた。
森川北翔は見た目ほど単純ではなく、森川グループ以外にも自分の勢力があるようだった。
栗原愛南は深く考えず、隣のソファに歩み寄り、そこに座って静かに栗原奥様を見守った。
栗原郁子はそれを見て、再び外に出て行った。
ドアの外。
森川北翔は出るとすぐに栗原叔父さんの方へ歩いて行った。