森川北翔も今日は黒いウールのコートを着ていて、その凛々しい雰囲気は目の前のイケおじさんに引けを取らなかった。
彼は車から降りると冷たい表情で中に入り、何かを察知したかのように首を回して栗原愛南の方を見た。
少女が自分に手を振っているのを見ると、森川北翔の表情が和らいだ。
そして初めて栗原愛南の向かいに人がいることに気づいた。
誰かを確認しようとした瞬間、突然携帯が鳴り出した。
森川北翔はすぐに電話に出ると、向こうから甲高い声が聞こえてきた。「北翔お兄さん、今どこ?会いたいの!」
森川北翔は眉をひそめた。「すまない、今は妻と食事中だ」
「来てくれない?北翔お兄さん、小さい頃約束したじゃない。大きくなったら私を迎えに来てくれるって。どうして来てくれないの?私、待ってるのに!」