「広石研究員、こちらへどうぞ」
森川麻理亜が丁寧に案内すると、「広石研究員」と呼ばれた男性は無意識に周りを見回した。まず、目の前の豪華な装飾に驚き、それから目の前の人たちを見た。
彼の視線が数人の上を滑り、最後に栗原愛南の上で止まり、少し驚いた様子だった。
彼は以前、ノラ研究員を一度だけ見かけたことがあったが、残念ながら横顔だけだった。
目の前の人はノラ研究員に少し似ていた。
栗原愛南も研究所の人を見て、少し眉をひそめた。
京都研究所の院長の名前は野池茂で、彼女はずっと知っていたし、薬を届けに来る人でもあった。なぜ入ってきた人がこの見知らぬ広石研究員なのだろうか?
彼女が不思議に思っている間に、森川麻理亜はすでに紹介を始めていた。「お爺さん、お父さん、叔父さん、こちらが私が言っていた広石研究員です。彼は私の彼氏のいとこで、現在研究所で働いています」
そう言って、彼女は笑顔で栗原愛南を見た。「伯母さん、以前おばあ様の病歴を研究所に提出したと言っていましたが、あちらは選考が厳しくて、コネは使えないんです。実際そうなんです。さっき広石いとこが言っていたんですが、京都五大名家の一つである栗原家が突然院長に枠を要求してきたので、野池院長はそれを聞いて、疑いを避けるために夜中に海浜市に駆けつけたそうです。だから今回の試験薬の枠は本当に難しいんです!」
広石研究員はこの言葉を聞いて、密かにほっとした。
ノラ研究員が枠を欲しがるなら、一言で済むことではないか?どうして履歴書を提出する必要があるのだろうか?
自分が人違いをしたようだ……
広石研究員は笑いながら口を開いた。「主に、今回ノラ研究員が研究した薬品はかなり高価なので、本部はわずか50の枠しか日本に与えませんでした。しかも、すべてノラ研究員が直接患者を選ぶことになっています。だから今回は本当に人脈を使って枠を得ることはほぼ不可能です。森川さんの孝行心に感動しなかったら、私も院長に枠をお願いすることはなかったでしょう」
森川麻理亜はすぐに言った。「本当にいとこさんありがとうございます。この枠がどれほど難しいかわかっています。今回は本当に私たち家族を大いに助けてくれました!」
森川元碩と森川光佑も直ちに感謝の意を表した。