第233章 出身？

栗原愛南は驚いて森川北翔を見つめた。

　　来る時、彼は軽く紀田葵可が自分の命を救ったと言っただけで、詳細は話さなかった。

　　そうか、彼も誘拐されたのか……？

　　ただ、自分とは違って、彼は当時殺されそうになったのか？

　　それなら確かに命の恩人と言えるだろう。

　　だからこそ森川北翔が紀田葵可にあれほど寛容なのだ。

　　彼女がそう考えていると、森川北翔はすでに口を開いていた。男の声は低く、その声色には僅かな甘さが含まれていた。「すまない、言葉が過ぎた」

　　彼はまだ栗原愛南の手をしっかりと握ったまま、複雑な眼差しで紀田葵可を見つめ、真剣に説明した。「本当は、幼い頃の約束も約束だと思っていた。僕は君のことは好きじゃないけど、一生結婚せずに、君が必要な時に寄り添うつもりだった。でも愛南との婚約関係ができるとは思わなかったし、彼女を好きになるとも思わなかった。この間、長い間考えた」