栗原愛南は張本朔の後ろについて外に出ると、そこが小さな別荘だと気づいた。
別荘の前には、70〜80万円ほどの7人乗りの商用車が停まっていた。
家には運転手がいないので、張本朔は雪音を後部座席に投げ入れると、運転席に座った。
このことから、南條家は中流家庭で、安定した収入はあるものの多くはなく、やや裕福な生活を送っていると判断できる。
しかし、お金持ちの家庭ではない。
彼女が心の中でじっくり考えていると、張本朔のお母さんも後からついてきて、荷物を後ろに投げ入れ、助手席に座った。
張本朔はいらだたしげに彼女を見て言った。「早く乗れよ!」
栗原愛南は目を伏せ、静かに後部座席に乗り込み、ひどく怯えて全身を震わせている雪音を抱きしめた。
彼女は荷物の中からきれいなズボンを取り出し、雪音に履かせ、おむつをつけてから隣の安全シートに座らせた。
小さな雪音はすすり泣きながら、声を出す勇気もなかった。
栗原愛南はポケットを探り、スマートフォンを取り出した。
画面を開くと、南條と雪音の2ショット写真が表示された。
これは南條のスマートフォンだ……
栗原愛南は少し驚き、ようやく起こった出来事を整理する時間ができた。
彼女と南條がレストランの個室で話を終えた後、奇妙な香りで気を失い、目覚めたときには沈没船の上にいた。
そのとき、彼女と南條の荷物は……船にはなかったようだ?!
その後、二人は必死に逃げ出し、最後に南條が彼女を板の上に押し上げたとき、確かに彼女の身にはスマートフォンがなかった!
その後、南條は水中に沈み、大きな船が来て彼女を救助し、彼女は完全に意識を失った。
目覚めたとき、彼女は南條になっていた。
姉のスマートフォンが彼女のポケットに……
そして雪音が言及した医者のおじさんが、鉄分を投与して鉄欠乏性貧血で死なないようにしてくれたこと、そしてプールで気を失ったと言ったこと……
これらすべてが、とてもおかしい!
南條はその時こう言った。「彼らだわ、きっと彼らが来たのよ!私たちを殺そうとしてる!」