栗原奥様は興奮して言葉もままならず、スマホを指さして泣き出した。
栗原文彰は少し戸惑い、スマホを置いて彼女の背中をさすりながら言った。「このビデオに映っている人の顔ははっきり見えないよ。必ずしもそうとは限らない。落ち着いて、調べてみるから!」
「ええ、お願い……」
栗原奥様は栗原文彰を押し、外に出るように促した。
栗原文彰は眉をひそめ、部屋を出た。
栗原奥様は少し考えて、栗原文彰の力では、その女の子が誰なのか分からないかもしれないと思った。相手は野球帽とマスクをしているのだから。
娘が帰ってきたのに、自分と再会しようとしない……きっと愛南は犯人が近くにいることを知っているからだ!
栗原奥様は拳を握りしめ、ベッドサイドから自分のスマホを取った。
LINEを開くと、2日前に栗原家の三男と追加したばかりのアカウントがあった。
彼女はここ数年控えめに過ごし、海浜市では自衛する力がなかったので、栗原叔父さんと二度と会いたくないと思っていても、軽重緩急を見極めることはできた。
彼女は直接栗原家の三男にメッセージを送った:【お願いがあるのですが。】
栗原家の三男は即座に返信した:【何なりとお申し付けください。お聞きしましょう。】
前の8文字を見て、南條静佳の表情が一瞬凍りついた。
彼女は唇を噛み、言いようのない複雑な気持ちになった。
過去の出来事はすべて心の奥深くに埋めてしまい、この先二度と彼と関わりを持ちたくなかったが、娘のためなら……
南條静佳は深呼吸をして、ゆっくりと入力を始めた:【娘の情報が入ったので、あなたに手伝ってもらいたいのですが……】
入力している最中に、突然病室のドアが開いた。
南條静佳は少し驚いて顔を上げると、栗原文彰が入ってきたのが見えた。
南條静佳はさりげなく尋ねた。「文彰、何か分かった?」
栗原文彰は彼女に近づきながら、眉をひそめて言った。「調べるよう頼んだところだ。ふみくん、焦らないで……」
そう言いながら、南條静佳のスマホに目をやった。「誰にメッセージを送っているんだ?」