栗原叔父さんは顔色を焦らせ、足を止めずに直接2階へ駆け上がり、病室の前に到着した。
南條静佳は彼に頼み事をすることはなかった。
前回頼んだのは、娘が事故に遭った時だった。
今回また彼に頼み事をするということは...きっとまた何かあったに違いない!!
彼は彼女に何度もメッセージを送り、電話をかけたが、南條静佳は返信も応答もしなかった。もしかして、栗原愛南を殺害した犯人が、今度は彼女を狙っているのだろうか?
この考えが栗原叔父さんの足取りをさらに早めた。
彼は両手を病室のドアに置き、力強く押し開けようとした時、栗原文彰が入り口に立ちはだかっているのを目にした。
栗原叔父さんは足を止めた。
栗原文彰はゆっくりと口を開いた。「叔父さん、どうしてここに?」
栗原叔父さんは焦りながら尋ねた。「静佳はどこだ?」
栗原文彰は咳払いをしてから答えた。「彼女は今、お風呂に入っています。」
栗原叔父さんは一瞬驚いた。
栗原文彰は申し訳なさそうな表情を浮かべた。「ふみくんは長い間病気で、何日も風呂に入れていませんでした。今やっと目覚めて、今お風呂に入っているところです。あなたが入るのは適切ではありません...」
栗原叔父さんの視線はVIP病室の浴室に向けられた。
不透明なガラスドアを通して、かすかに水の流れる音が聞こえた。
彼には見えなかったが、浴室の中では。
南條静佳は惨めな姿で、病院着はボロボロに引き裂かれ、口には何かが詰め込まれ、手足は縛られて全く動けない状態だった。
上から熱いお湯が流れ落ち、彼女の全身を濡らしていた。
彼女は必死に助けを求める声を出そうとしたが、すべて水の音にかき消されてしまった。
ドアの外で、栗原叔父さんは急いで視線を戻したが、何か違和感を覚えた。「さっき彼女から連絡があって、何か頼みたいことがあるって...」
栗原文彰はうなずいた。「そうです。私たち二人で叔父さんにメッセージを送りました。」
彼は外を指さした。
栗原叔父さんは一歩後ろに下がった。