花香亭を出た栗原愛南は、道端でタクシーを拾い、栗原家へ向かった。
すでに遅い時間だった。
道中、彼女は海浜市の夜景を見ながら、顎を引き締めた。
この一日の出来事は、まるで一生分の長さを感じさせるほどだった。
以前は漠然と生きることだけを考えていたが、
今や彼女の目標は、殺人犯を見つけ、普通の生活を取り戻すことだった。
車はすぐに栗原家に到着した。
栗原愛南は黒いマスクと帽子を着用し続け、車を降りて栗原家の玄関に立ち、インターホンを押した。
ドアはすぐに開いた。
開けたのは南條伯母さんで、栗原愛南を見て少し驚いた様子だった。「あなたは誰?」
犯人が誰かわからない時は、誰も信用できない。
栗原愛南は目を伏せて言った。「こんにちは、栗原愛南の同級生です。おばさまにお見舞いに来ました。」