第268章 栗原叔父さんに助けを求める

  この紙切れを見た栗原愛南の瞳孔が一瞬縮んだ!

  栗原文彰が犯人……?

  彼女は幼い頃から栗原家で育ち、南條静佳が実は才能のある人だということを知っていた。ただ、その能力を発揮せず、何かから逃げているようだった。

  そして栗原文彰という父親は……彼女にとって見知らぬ人だった。

  彼にそこまでの能力があり、自分と南條歌奈を痕跡も残さずに誘拐できるのだろうか?

  彼女はこの紙切れの真実性を疑わなかった。ただ、彼女が戻ってきてから、竹歳明が彼女の事件後のすべての調査結果を報告してくれた。

  さらに、森川家は海浜市第一の名家であり、森川北翔はこの間ずっと犯人の手がかりを調査していたが、結果は全く手がかりがなかった。

  これほど隠密にできるということは……栗原文彰が実力を隠していたか、それとも誰かが手伝っているかのどちらかだ!

  栗原愛南は顎を引き締めた。

  前回、南條歌奈が彼女を訪ねてきて、誰かが彼女たちを殺そうとしていると言った時、彼女は信じなかった。あまりにも荒唐無稽だと思ったが、結果的に南條歌奈は死んでしまった。

  このことを思い出すたびに、南條歌奈が最後に彼女を見捨てて自分で板に這い上がることができたのに、生還のチャンスを自分に譲ってくれたことを考えると、胸が締め付けられる……

  彼女の油断が南條歌奈を死なせてしまったのだ。

  栗原愛南は犯人が殺人者だということを知っていたが、それでも自責の念と罪悪感を感じずにはいられなかった。

  だから南條静佳の救助を求める手紙を見たとき、彼女は軽率に行動することはできなかった。一度動いて栗原文彰を押さえられなかったら、逆に母を傷つけてしまうかもしれない!

  彼女は深呼吸をして、今は助けを求めなければならないことを知った。

  でも誰に助けを求めればいいのか?

  森川北翔?

  この考えが浮かんだ瞬間、栗原愛南はすぐにそれを押し殺した。

  彼女はしばらく考えた後、最終的に栗原叔父さんに頼むことに決めた!

  栗原叔父さんと母親の過去のことや、彼らの「二度と会わない」という約束が何なのかわからないが、栗原叔父さんと何度か接触してみて、彼女は自分の直感を信じることにした。

  栗原叔父さんは彼女と母親に悪意はない。