栗原愛南は知らなかった。森川北翔が京都に進出することを決めたことを。
その後数日間、彼女は雪音を連れて落ち着いて、南條に属するすべてのものを確認し始めた。
竹歳明のほうはすでに南條の情報を徹底的に調査し、小学校がどこだったかまで明らかにした。
南條の人生は一見普通で平凡に見えた。
彼女は孤児で、養父母が亡くなり、この別荘と小規模な会社を彼女に残した。
彼女は張本朔を婿養子として迎え、娘の雪音の本名は愛南で、彼女の姓を名乗っている。
結婚してからは、南條は一度も仕事に行っておらず、会社は張本朔に任せ、彼女は家で夫を支え子育てをしていた。
栗原愛南が頭を悩ませたのは、南條と張本朔が結婚前に離婚協議書を交わしていたことだった。
誰が悪かったにせよ、二人が離婚すれば、子供の親権は張本朔のものになるという内容だった。