第276章 栗原叔父さんがDNAを調べる!

栗原愛南は知らなかった。森川北翔が京都に進出することを決めたことを。

  その後数日間、彼女は雪音を連れて落ち着いて、南條に属するすべてのものを確認し始めた。

  竹歳明のほうはすでに南條の情報を徹底的に調査し、小学校がどこだったかまで明らかにした。

  南條の人生は一見普通で平凡に見えた。

  彼女は孤児で、養父母が亡くなり、この別荘と小規模な会社を彼女に残した。

  彼女は張本朔を婿養子として迎え、娘の雪音の本名は愛南で、彼女の姓を名乗っている。

  結婚してからは、南條は一度も仕事に行っておらず、会社は張本朔に任せ、彼女は家で夫を支え子育てをしていた。

  栗原愛南が頭を悩ませたのは、南條と張本朔が結婚前に離婚協議書を交わしていたことだった。

  誰が悪かったにせよ、二人が離婚すれば、子供の親権は張本朔のものになるという内容だった。

  これが、南條が張本朔に浮気相手がいることを知りながらも、離婚を切り出せなかった理由だった。

  ……まるで良い手札を台無しにしてしまったようだった。

  南條はいったいどれほど恋愛脳だったのか、このような協議書に署名するなんて!

  張本朔に握られっぱなしなのも無理はない。

  雪音は彼女の命そのもので、雪音のためなら離婚なんてできるはずがない。

  そして張本朔は離婚せずに、彼女のお金を使い、自分の愛人を養うことができる。その愛人はどうやら妊娠もしているらしい……

  栗原愛南が書斎で南條の各種書類を整理していると、張本朔が入ってきて、直接彼女に十万円を投げつけた。「ほら、今月の生活費だ」

  栗原愛南は驚いた。「こんなに少ないの?」

  ここは京都で、別荘の毎月の管理費だけでも数万円かかる。残りはおそらく雪音のミルクを買うのがやっとだろう。

  張本朔は嘲笑した。「少なければ節約しろよ!他の人は月給数万円でも十分やっていけるだろ?なんでお前だけダメなんだ!」

  栗原愛南は眉をひそめた。「私は……」

  言葉が終わらないうちに、張本朔が口を開いた。「俺にお金を求めるな、ないんだ!」

  栗原愛南は眉をしかめた。「どうしてないの?会社からは毎月百万円の給料が出ているはず……」

  「税金は払わなくていいのか?」