第310章

栗原愛南はしばらく呆然としていたが、急いで男の拘束を解こうとした。

  森川北翔は彼女を見つめ、目に笑みを浮かべながら言った。「愛南は幼い頃から才能を隠していたが、実際のところ武術を学んだことはない。愛南、君の正体がばれたね。」

  栗原愛南は男の手からネクタイを解き、桃の花のような目で彼を見つめながら言った。「森川さん、あなたが何を言っているのかわかりません。」

  「そうかい?」

  森川北翔は手首を動かし、主寝室のソファに座った。目は依然として彼女に向けられていた。

  栗原愛南は彼の視線に少し落ち着かなくなり、頭を下げて続けた。「森川さん、こんな遅くにここに来るのは適切ではないでしょう?」

  森川北翔は目を伏せながら、その奥に微かな笑みを浮かべた。「南條お嬢様は私の亡き妻によく似ています。私は彼女を恋しく思い、会いに来ました。気にしないでいただけると幸いです。」

  栗原愛南:「……好きにしてください。」

  彼女は森川北翔を無視し、主寝室で何かを探し始めた。紀田杏結が言及した日記帳がどこに隠されているのか知りたかった。

  しかし、彼女はすでにこの主寝室に1ヶ月住んでいたが、そんなものを見たことがなかった。今になってどうやって見つけられるだろうか?

  栗原愛南は書斎の前に立ち、目の前を見つめながら考え込んだ。

  愛南はその日記をどこに隠すだろうか?

  クローゼットの中は、すでに整理済みだったが何もなかった。

  書斎のデスクの上や、様々な引き出しの中にも何もなかった。

  この1ヶ月間、彼女は張本朔のお母さんの世話をするだけでなく、毎日熱心に家の掃除をしていた。それは愛南に関する情報を探すためだった。

  彼女の秘密を知りたかったのだ。

  しかし、家中のものをすべて取り出して調べたが、愛南の普通の日記は見たことがあるものの、何も異常なものはなかった!

  もし今日紀田杏結が愛南には鍵のかかった日記帳があり、誰にも見せないと言わなければ、そんなものがあることすら知らなかっただろう。

  彼女はベッドの上もあちこち触ってみたり、ベッドの下も覗いてみたりしたが……まだ何の手がかりも得られなかった。