第313章

産婦人科。

  紀田杏結の手足は冷や汗でびっしょりだった。目の前の診察室をじっと見つめていた。

  栗原愛南も彼女を慰めることはせず、ただ十分なスペースを与えるだけだった。

  「13番、紀田杏結さん、紀田杏結さんいらっしゃいますか?」

  看護師が突然彼女の名前を呼んだ。杏結は驚いて立ち上がり、「はい!」と答えた。

  杏結は看護師の後ろについて行きながら、振り返って栗原愛南を見た。

  栗原愛南は彼女に励ますような目線を送った。「行ってらっしゃい!」

  杏結はつばを飲み込み、看護師について部屋に入った。

  一連の検査を経て、杏結の妊娠が確認された。医師は尋ねた。「本当に中絶しますか?」

  杏結は顎を引き締め、指をきつく握りしめ、しばらくしてからうなずいた。