第312章

森川北翔は無意識に栗原愛南の方を見て、目で尋ねた:言ってもいいか?

  昨夜、栗原愛南と心ゆくまで話した後、栗原愛南は愛南の死因を森川北翔に告げ、ついでに母親のことも話した。

  森川北翔はその時こう言った:「栗原奥様のことは、私の方でずっと協力していますが、今のところまだ何の情報もありません。」

  森川北翔と栗原叔父さんにはある程度の付き合いがあるということは置いておいて、栗原奥様は結局のところ栗原愛南の母親であり、森川北翔はずっと気にかけていた。

  しかし、これまでその理由がわからなかったが、今はわかった。

  二人が情報を交換した後、森川家と栗原家の家柄をもってしても「南條家の人々」がどこにいるのか調べ出せなかったことがわかり、南條家の人々が非常に神秘的であることを十分に示している。

  そうなると、母親を救う唯一の方法は、蛇を穴から出すことだ!

  南條家の人々は愛南と連絡を取るだろうから、栗原愛南は今のところ身元を明かすことはできず、愛南の身分で彼らが自主的に連絡してくるよう誘導しなければならない。

  森川北翔は自分の出現が、人々に愛南と栗原愛南を結びつけさせないようにするため、少し考えた後、身分を隠して栗原愛南のそばに付き添うことにした。

  彼は咳をして、ちょうど名前か何かを作り上げようとしたとき、紀田杏結が笑った:「まさか?愛南、ついに農奴が歌を歌うようになったの?あなたのこの小さな彼氏、本当にあなたにがっちり掴まれちゃってるわね!名前すら言えないなんて?」

  森川北翔:「……」

  彼は何も言わなかった。

  紀田杏結もこれらを気にせず、栗原愛南のために嬉しく思った。

  ちょうどそのとき、彼女の携帯電話が再び鳴った。

  彼女は下を向いてちらりと見て、すぐに眉をひそめた:「くそっ!」

  栗原愛南は淡々と尋ねた:「どうしたの?」

  紀田杏結はため息をついた:「叔父さんったら本当に……森川北翔が京都に来たって聞いて、機会を見つけて偶然を装って会って、試してみろって……」

  「ゴホンゴホン!」

  栗原愛南は無意識に森川北翔をちらりと見た。