第325章

栗原由奈は全く人材を奪おうとする罪悪感がなく、その場で顎を少し上げて言った。「そうよ、私が人と約束したの。誰と約束したか知りたい?」

彼女は腕を組んで、笑いながら言った。「あなたたちの研究の大物Nと約束したの。さっき彼とメッセージをやり取りして、彼は私たちの栗原グループに来ることにとても興味を持っているわ。だから、ここで少し話をしようと思ってるの」

栗原由奈の考えはとてもシンプルだった。

Nが最終的に来るかどうか、来てからどんな話になるかに関係なく、このことを愛南に伝えれば、彼女とNの間に一本のトゲを埋め込むことになる!

そうすれば、たとえNが来なくても、愛南は彼を信じなくなるだろう。

こうなれば、Nは来るしかない!

自分は本当に賢いわ。

栗原由奈はそう考えながら笑い出し、「愛南、あなたはNのことをこんなに無関心でいられるなんて、冷たすぎるわ。それに、Nはあなたに一途なのに、あなたは離婚したばかりなのに応えもせず、代わりに大学生を見つけるなんて、彼に申し訳ないと思わない?」

自分が多くの重要な秘密を握っていると思い込み、高飛車に非難した。「才能ある人材は大切にすべきよ。あなたは彼の名前さえ外に言わず、全ての功績を自分と会社のものにしている。今日のような大きな場面でも、Nに自分を表現する機会を与えないなんて、あなたは本当に自己中心的すぎるわ」

栗原愛南:「……」

彼女は眉をひそめ、紀田杏結と視線を交わし、思わず二人とも笑ってしまった。

紀田杏結は直接反論した。「栗原由奈、南條テクノロジー株式会社の事情にあなたが口を出す立場じゃないでしょう?」

栗原由奈は偽善的に言った。「私はただ見過ごせないだけよ。あなたがあまりにも能力のある人を抑圧しているように感じるの。人材を奪われるのが怖くて、もっと優しくできないの?私たちの栗原グループは違うわ。才能ある人にはもっと良い発揮の場と舞台を与えるわ」

栗原愛南:「……」

彼女は咳をして、うなずいた。「うん、栗原グループが人材を横取りしようとするのは、確かに違うわね」

「あなた...!」

栗原由奈は激怒し、彼女を指さして怒鳴った。「これが何の横取りよ。これは双方の合意の上でのことよ。そんな汚い言い方しないで。でも、あなた、まさか人を手放さないつもりじゃないでしょうね?」

栗原愛南:?