第360章

栗原井池は表情を固くし、彼を上から下まで見つめた。

栗原叔父さんは彼が黙っているのを見て、すぐに何かに気付いたようだった。眉をひそめ、咳払いをしてから、ゆっくりと言った：

「あのさ、お前の父親のことか？井池よ、うちの家系は一途な男ばかりだ。お前の父親がそんな過ちを犯すはずがない。きっと何か我々の知らない誤解があるんだろう。ほら、寛大な心で許してやったらどうだ？結局のところ、これは栗原家の嫡流の娘なんだぞ。うちの三男の家系には実の娘が一人もいないことを知っているだろう……」

栗原叔父さんは今日、珍しく饒舌だった。

栗原井池にこの妹を認めさせようとしているようだった。

栗原井池は口角を引き攣らせながら、彼を見つめた：「叔父さん、ひとつ可能性があるんですが、彼女は叔父さんの娘なんじゃないですか？」

「ありえない！」

栗原叔父さんは即座に否定した：「自分の人生で何をしてきたか、自分が一番よく分かっているだろう？」

栗原井池は再び口角を引き攣らせた：「でも、彼女は確かに叔父さんの娘です。」

栗原叔父さんは直接的に言った：「言っただろう、ありえない。私は生涯、南條お嬢様以外の女性とは関わりを持っていない。」

栗原井池は黙って彼を見つめた。

栗原叔父さんはその様子を見て、すぐに自分の言葉に気付き、咳払いをした：「私と南條お嬢様の間には、何も起こっていない……お前が考えているようなことじゃない！」

彼と南條静佳は若かりし頃に出会い、情は芽生えたが礼節は守った。

一線を越えることは決してなかった。

他の女性に関しては……そもそも彼の身近に寄ることすらできなかった。

この点については非常に確信があったので、当時海浜市で栗原愛南が栗原文彰の娘ではないと分かった時も、すぐには自分を疑わず、その時も栗原井池に断言したのだ、ありえないと。

栗原井池は彼がそれほど断言するのを見て、口角を引き攣らせながら、手を広げて言った：「DNAの検査結果によると、愛南は確かに叔父さんの娘です。」

この言葉に栗原叔父さんは一瞬呆然とし、眉をひそめて尋ねた：「何だって？」

「本当です。」栗原井池は、これから話すことを栗原叔父さんが受け入れられないかもしれないと知っていた。彼はしばらく躊躇してから、やっと口を開いた：「もう一つ話があります……」