栗原愛南は目を伏せた。「私の意見は気にしないで」
結婚までまだ時間があるから、いずれ八木珊夏と外のあの男の証拠を見つけられるはず。そうしたら栗原光雄に渡せば、大事にはならないだろう。
八木珊夏は直接言った。「じゃあ、妹は反対しないってこと?」
「やった!やっと一緒になれるんだね!」栗原光雄も気分を良くし、八木珊夏を抱きしめくるっと回った。
二人から溢れ出る幸せそうな様子に、その場にいた全員が感じ取っていた。
八木珊夏は少し間を置いて、笑顔で栗原愛南を見た。「妹、許してくれてありがとう。でも...」
彼女は軽くため息をついた。「私と栗原お兄さんが一緒になれることを考えると、お兄さんのことを思い出すわ...紀田杏結とずっとこんな状態が続いているけど、いつ仲直りするつもりなの?」
この言葉に、皆が栗原愛南を見つめた。
栗原井池が毎日家で沈んでいる様子を、みんな見ていて、この件を心配していた。
栗原愛南は口を開いた。「わからない」
八木珊夏は驚いたふりをして言った。「妹、どうしてわからないの?紀田杏結はあなたの家に住んでいるでしょう?」
そう言って、彼女は諭すように続けた。「親友の言葉は一番心に響くって言うでしょう。お義姉さんがあなたの家にいるなら、お兄さんのために良い言葉をかけてあげれば、夫婦なんだから、仲直りできるんじゃない?」
栗原愛南は冷ややかに彼女を見た。「紀田杏結がお兄さんを許さないなら、私にどうしろというの?」
八木珊夏は言った。「紀田杏結が紀田家と絶縁したって聞いたわ。妹、彼女をあなたの家から追い出したらどう?そうすれば行き場がなくなって、お兄さんと仲直りするしかなくなるでしょう」
栗原愛南はこの言葉を聞いて冷笑し、八木珊夏の気持ち悪さを感じた。
彼女は目を伏せた。「私のことは、余計な心配しないで」
八木珊夏はすぐに栗原光雄を見て、委細そうに言った。「栗原お兄さん、私、余計なこと言いすぎました?」
栗原光雄は口を開いた。「お義姉さんは流産したばかりで、今は体調が良くないのに、どうして妹に追い出せなんて言うの?」